デザインダイアローグコペンハーゲン

デンマークのコペンハーゲンでのデザイン留学を通して考えたこと

とあるスポーツ施設のデザインリサーチプロジェクトにおける目標設定

先週から、People Centred Designの授業を受けています。この授業では、実際に課題を与えられて、リサーチを行い、何らかのソリューションを提案すると言うもの。

以前、下記のような記事を書きました。この中でデザイナの役割には、機会探索、ストーリーテリング、実行の3つがあると述べています。これまでは、ストーリーテリングや実行の部分に重きを置いたカリキュラムが中心であったように思いますが、今回の授業ではようやく、機会探索に踏み込んで行くことになります。

ddcph.hatenablog.com

今回のデザイン対象となるのは、コペンハーゲン市営のスポーツ施設。どういう経緯でこういう課題が学生の授業に回ってきたのかはわかりませんが、CIIDはコンサルティング部門を持って居るので、そちらの案件の中から学生にちょうど良さそうなものを授業にまわして来たのかもしれません。

そのうち紹介できればとは思うのですが、CIIDはリサーチ部門、コンサルティング部門、インキュベーション部門、教育部門を持っており、それらが有機的に連携しているなぁと感じる事が多々あります。これらは小さな組織だからこそ出来る強みなのかもしれませんが、大変興味深いです。

課題の話に戻しましょう。スポーツ施設をもっとよくするために、どういった提案ができるかと言うのが我々に与えられた課題です。「もっとよくする」と言っても、色々な方向性が考えられますが、今回の課題では、方向性の策定から求められています。リサーチ活動を行って機会を見出せと言うことなのでしょう。

課題が発表されたあと3人1組のチームに別れて、それぞれ課題に取り組んでいきますが、まず最初にやることはResearch Objectiveの設定。各チームメンバーが、今回のデザインテーマに関してどういった領域に興味を持っているかを書き出し、どの方向に向かってリサーチを行っていくかを決めていきます。3人の少人数とは言え、興味関心の分野はバラバラな事が多いです。例えばある人は、どうやったら公園の知名度が増えるかとか、どうやったら公園の利用者が増えるかと言ったところに興味があったりしますが、他の人は、既に公園を利用している人の満足度を高められるかと言うところに興味があったりします。なので、どのあたりにターゲットを絞ってリサーチ行うかの方向性を設定するわけですね。具体的には「◯◯についての理解を深める」だとかで、これをResearch Objectiveと呼んでいます。ちなみにこれあくまでも現状を把握するためのリサーチであって「◯◯を◯◯する方法を探す」とかではないのが味噌です。そして設定したResearch Objectveを達成するために、どんなリサーチを行えばいいかを検討していくわけです。

これ、こうして文字にしてみるとすっごい当たり前だと思うんですけど、意外と軽視されている気がするんですよね。目的を設定せずに行動に出てしまう事、結構多いんじゃないかなと。例えば、とりあえず現状を知ろうってことでインタビューなどを行うにしても、そもそもどんな人にインタビューするのが良いのか判断が難しいですし、そもそも何を聞けば良いのかもわからない。とりあえずスポーツ施設に行って、そこにいる人を捕まえて聞く事は出来なくは無いし、色々と有意義な話が聞けるかもしれないけれど、そのあとどうやって方向性を見出していくのか。それよりは、とりあえず機会がありそうな場所に仮説を立てて目標(Research Objectve)を定め、最初からぶっ込んで行くというアプローチはある意味でとても有効なのかなと思うのです。