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デザインダイアローグコペンハーゲン

デンマークのコペンハーゲンでのデザイン留学の日々について書いています

引き続きインタビューを

ファイナルプロジェクト

Cafe

現在までに累計6人の方々にご協力して頂き、引き続きインタビューを行っています。このようなデザインリサーチの際に気をつけるべき事は、なるべく異なる属性の人にインタビューをお願いすると言うこと。

例えば同じ年代、同じ性別、同じ家族構成で同じような人生を歩んできた方にお話を伺っても、もちろん完全に同じでは無いでしょうが、そこまで大きな違いと言うのが現れない可能性が高いわけです。

それよりは、違う年代だったり、男女のバランスだったり、異なる家族構成だったり、なるべく異なる人にインタビューをお願いするように心がけます。

例えば今回、インタビューさせて頂いたなかで、子供を持つ親御さんという立場の方がいらっしゃいました。子供が居る家庭においては物事の中心が子供のことになりがちですから、一人暮らしの方とくらべて、生活スタイルは大きく異なってくる事は想像に難くないかと思います。

また、年代、例えば20歳の方と、30歳の方、40歳の方においても、ジェネレーションギャップと言いますか、コンピュータやスマートフォン、その他の技術に関する接し方が異なっており、どれが良い、悪いというわけでは決して無いのですが、例えばカメラというものに対しても微妙に異なる考えや接し方があり、非常に興味深いなと思うわけです。

そして様々な属性を持つ方にインタビューさせていただく傍ら、エクストリームユーザへのインタビューも試みます。エクストリームユーザと言うのは、普通のユーザとは異なる極端なユーザのことです。例えば、平均的なのユーザが月に数十枚程度の写真を撮るとして、1000枚以上の写真を撮る人であったり、またはそもそもカメラを全然使わないという人が、エクストリームユーザの例となるでしょうか。

そういう方を見つけるのは大変かも知れませんが、彼らの話を伺い、どのような考えを持ち、どのようにカメラと接しているかを知る事で、新たなインスピレーションを得て、アイディアのネタとなる事が多くあります。

このように、デザインリサーチに置いては、一般的なユーザにインタビューを行って、多くのユーザがどのような考えを持っているかを知ると同時に、エクストリームユーザにもインタビューをおこなう、というスタイルが重要になってきます。

 

ファイナルプロジェクトのためのインタビュー開始

ファイナルプロジェクト インタビュー

sharing

先日作成したResearch Guideに従って、早速インタビューを行いました。

ddcph.hatenablog.com

まずは、自分の作成したReseach Guideがうまく動くかを確かめるために、身の回りの人に協力してもらってインタビューを行います。

Reseach Guideそのものは実際のインタビューの様子を想定しながら作成しているわけですが、やっぱり実際にやって見ないとわからない事も結構ありますし、文字として表現されたものと、声に出して表現するのでは、同じ内容でも意図がうまく伝わる場合もあれば伝わらない場合も結構あリます。

そんなわけですから、まず最初は気心の知れた人にインタビューをお願いするのが良いのかなと思います。

と、いうわけで、記念すべき第一回インタビュー。

まずは、どのようなカメラを使っているかだとか、どのようなシーンで、どの程度カメラを使用しているかなどについて話を進めていきます。その後、それらをどのように管理、整理しているかの話題に進み、最後は撮影したカメラ画像の活用についての話に進めて行きます。

ところで今回のインタビューでは、若気の至りと言うべきか、下記の記事で紹介したように何らかのリサーチツールを使いたいと思っておりました。

ddcph.hatenablog.com

で、比較的抽象的な絵を見せつつ、あなたが画像を活用するイメージに近いものはどれですか?と質問を投げかけたのですが、これがうまく行かなかった。活用するイメージってどういうこと…?と相手も困惑している様子。

私が当初想定していた回答としては、例えばノートに何かを書いている絵を指さしながら「私のイメージに近いのはこれかな?私が写真を撮影するのは自分用の記録のためだから、日記に近いんだよね。とりあえず毎日の生活を記録してはおくけど、それは特に何か明確な目的があるわけじゃなくて、まぁたまに見返したりはするかもだけど…」みたいな回答を想定していたのですが、私の質問の仕方が悪かったということもあり、そういった回答は得られず。うーん、なかなか難しい。

後ほど、この件に関して、どうすればよかったのかアドバイザーに相談してみました。

そうすると、それは聞き方が悪い、もっと具体的に聞かないといけないと言われてしまいました。また用意した画像の選択に関しても、抽象と具体のバランスが難しいんだけど、まだちょっと具体的過ぎるものもあるよねとのコメントが。

では、どのように聞けば良いのかと言う点についてなのですが「あなたの使い方に近いものはどれですか」ではなくて例えば「あなたの共有のイメージに近いのはどれですか?」というのを聞くのはどう?ということ。

つまり、これに関してはあらかじめ私とアドバイザで認識の違いと言うのもあったみたいなんですね。私は当初、インタビューのこの質問を通して下記の2点を明らかにしたいと思っていたのです。

  • 写真をどのようにして使いたいか
  • そのモチベーションは何か

ところが、アドバイザは下記の2点について明らかにしたいものだと思っていたようで。

  • 写真をどのように共有しているか
  • そのモチベーションは何か

これに関しては抽象と具体のバランスの問題でもあるのですが、抽象的な絵を見せながらとても広い質問を聞かれても、聞かれる側は困ってしまうだろうと。逆に、具体的な絵を見せながら具体的な事を聞かれても、聞かれる側は単刀直入に答えるしかなくて、インタビューとして深い知見を得られずに終わってしまう場合が多いとのこと。

そしてその後、もう一枚のソリューションが具体的に描かれている絵を見せながら、同様の質問を投げかけたところ、写真の近い道に関して様々な知見を得られたので、なるほど広い質問をする際には、ある程度具体的な絵を見せながら行うのも一つの方法何だなぁと思ったのでした。

 

個人プロジェクトでは雑談が増える

ファイナルプロジェクト

ファイナルプロジェクトが始まって約一週間。この1週間で感じた事といえば幾つかの事があるのだけれど、以前にも増してクラスメイトとの会話が多くなったように感じて居る。

ここでいう会話というのは雑談のこと。プロジェクトの話ももちろんあるけれど、雑談の量が多くなった気がするのです。

CIIDの授業では原則としてグループでプロジェクトに取り組みます。グループでプロジェクトの場合、会話の相手はやはりプロジェクトのグループメンバーが多くなりますから、会話の内容も基本はプロジェクトに関する事になってきます。

ところが、ファイナルプロジェクトにおいては基本的には個人でプロジェクトに取り組むわけですから、お互いのプロジェクトの内容についてクラスメイトと話し合う事はもちろんありますが、それ以外の話題も結構増えてくるんですよね。

昨日、フィットネスジムに入会したという話を書きましたが、これもその雑談の流れです。

ddcph.hatenablog.com

今まで、プロジェクトに関する話は結構していたけれど、そういえば私生活に関する事ってあんまり話をしていなかったし、ほぼ同じ空間にずっと居たにも関わらず、実はあまり良く知らないクラスメイトも結構いたなぁと今更ながらに思うわけです。

もちろん、仲の良いクラスメイトと言うのもいて、そういった彼らとはこれまでも一緒に遊んだり飲みに行ったりしますからそれなりに話をするわけですが、そういう機会でも無いと雑談する機会って無いですしね。

そしてファイナルプロジェクトでもうひとつ重要だなぁと思う事のひとつが、きちんと学校に行くということ。ファイナルプロジェクトは基本的に個人作業なので、学校に行かなくてもプロジェクトを進める事は出来るわけですが、やはり友人と顔を合わせるというのは重要で、雑談の持つ力というのは中々侮れないなぁとも思うのです。作業に煮詰まったときに、気軽に人と話す事が出来るというのは大変有り難いですし、あいつも頑張ってるから俺も頑張らなきゃという気持ちになりますしね。

 

コペンハーゲンでフィットネスジムに入会した話

生活

ファイナルプロジェクトが始まって約一週間が経ったわけですが、友人たちと話をしていて、俺らあまりにも体を動かしてないよねという話題に。

聞くと、同級生のうち何人かはフィットネスジムに最近入って体を動かしているとのことであった。なる程それは良いアイディアだと思い、私もフィットネスジムへの加入を検討してみることとした。

ちなみに、コペンハーゲンにある大手のフィットネスはFitness Worldfitness dkなる。両方の料金体系等や立地、営業時間等を調べて、どちらかにしようと思ったのだけれど、私は結局Fitness Worldを利用する事にした、

ちなみに、料金としてはFitness Worldは249DKK(日本円で4000円ぐらい)、FItness dkはヨガなどのクラスに参加しないのであれば249DKKのプランもあるがFitness Worldと同等の内容であれば299DKK(日本円で4500円)程度です。なお、営業時間は施設によって異なるもののFitness Worldのほうが比較的長く営業しているように見えます。

インターネットでそれぞれの評判などを検索してみると、Fitness DKのほうが施設やサービスが良いという声もあるのだけれど、Fitness Worldを推す声も多く、これならどちらも大差ないだろうと判断して、Fitness Worldに加入する事にしました。

インターネットから登録することも出来るのだけれど、加入する前に一度施設の状態を確認しておきたい思い、近所のFitness Worldに行ってみる事にした。この写真では微妙にわかりにくいけれど、3階建てのそれなりに広い建物で中も綺麗で清潔に手入れがなされていた。

受付にて、新しく入りたいんですがーと言うと、簡単に施設やシステムの紹介をしてくれ、登録処理をしてくれました。そして渡された会員証がこちら。

さて、いつまで続くかな。

しかし、日本の大手フィットネスジムって総じて月会費が1万円以上のことが多いです。プールがないフィットネスでも7000円とか。しかしながら物価の高いデンマークで月4000円でフィットネスが利用できるというのは驚きでもあります。

こちらではフィットネスジムが一般的で広く浸透しているので会員数がそれなりに期待できるからかなとも思ったのですが、国民の健康を増進して医療費を抑えるために保険組合から補助が出ているという話(詳細不明)も聞いたので、色々な要因があるのだとはありますが、ジム利用者に取っては大変ありがたい事ですね。

Research ObjectiveとResearch Guideについて検討する

ファイナルプロジェクト リサーチ

まずResearch ObjectiveとResearch Guideを検討することになったわけですが、それについて少し整理の意味も込めて記述しようかと思います。

結論から述べてしまうとResearch Objectiveに関しては、 下記のように設定しました。

写真の撮影、整理、活用に関して、人々がどのようにしているのか、また彼らがその中でどこに価値を見出しているかを理解する。

最初は、人々がどのように写真と付き合っているかだけを知るだけでも良いかなと思ったのですが、単純にプロセスだけでなく、各プロセスにおけるユーザの感情と言うか、価値感というのも合わせて探った方が、今後の機会創出などに取り組む際に有意義であろうと考えたため、後半部分を付け足しました。

Reseach Objectiveを設定したら次はResearch Guideの検討に入ります。Reseachの手法と言ってもいろいろあるのですが、今回はとりあえず基本でもあるインタビューを行うことにし、インタビューの内容を検討します。

社会学などを学んでいる人に取っては当たり前の事だとは思うのですが、インタビューと言ってもとりあえずその辺の誰かに思いつくままに話を聞けばいいというものではありません。あらかじめ、どのような事について聞くのか、どのような感じで進めていくのか、どのような情報が欲しいのかについて整理しておく必要があります。

インタビューの構成としては下記の記事でも触れていますので、興味のある方は読んでいただければと思うのですが、今回は、全体の構成というよりも、質問の中身についてちょっと書いてみようかなと思います。

ddcph.hatenablog.com

インタビューの内容を考える際には、冒頭で述べたResearch Objectiveをいかに達成するかを考慮することが大切です。ですので、写真をどのように撮影、整理、活用しているかという現状をまず把握するというのは重要かなと思い、この点についてヒアリングを行うこととしました。

ところでインタビューの構成には2種類あり、自分が行おうと思っているインタビューがそのどちらであるかを意識する必要があるということがあります。

ひとつは、広いトピックから入って、より具体的な詳細についてヒアリングを行っていく構成。たとえば、どういう風に写真を撮影しているのか?という質問に対してiPhoneで特定のアプリケーションを使用しているという回答が帰ってきたとすると、どういうアプリケーションなのか、どのようなシーンで、どの程度の頻度でそれを使うのか、そのアプリを使い始めたきっかけは何かなど、どんどん具体的に聞いていくスタイルですね。

もうひとつは、同じトピックなのだけれど、別のアングルから質問をしていくスタイル。たとえば、どのように撮影をして、どのように写真を整理して、どのように使っていますかと聞いた後に、いくつかの写真の活用例を見せて、例えばフォトブックを作ろうとする場合、どのように写真を撮影しますかと聞く、などは一つの例かもしれません。

インタビューは時間の都合上大きめのトピックを2つか、少し小さめのトピックで3つぐらいのセクションで構成するのが良いとされています。私の場合1つめのトピックで、ユーザの実態について把握して、2つ目および3つ目のトピックでユーザの価値観について把握出来るような内容としてResearch Guideを作成してアドバイザに相談に行きました。

それに対して帰ってきたコメントがこのような感じ。

まず、インタビューを行う際には、可能であればモノを見せてもらうと良いよという事。例えば、写真に関するインタビューでアプリの話になったならば、どんなアプリなのかを見せてもらったりだとか、Google Photoに写真を全部アップロードしていると言うことであれば、Google Photoにストックされた画像を少し見せてもらったりだとか、そうすることによって、よりユーザの事を理解出来るよという事。

さらに、撮影した画像の活用方法に関してにインタビューで、ユーザがイメージし易いように、幾つかのソリューションをサンプルとして提示しようとしました、例えば下記のような幾つかの画像を。

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ところ、教授いわく、これはただのソリューションだから、インタビューが盛り上がらないのではないか、と。では、どうすればよいかというと、もっと抽象的な画像を使ったほうが良いのではないかということ。例えば、下記のような画像群を見せて、撮影した写真の使い方として、あなたが連想できそうな画像はどれですか?と聞くわけですね。

そうすると例えばリビングで家族で団欒するときにという回答が帰って来るかもしれませんし、本棚に保管しておくとか、プレゼントに使うとかそういう回答が帰って来るかも知れません。

これが何故有用かというと、上記のような画像軍だと、ソリューションとしての好みに関する話題に終始してしまいがちだけれど、下記のような画像軍であれば、もっと深い部分、例えば画像を活用するモチベーション等を聞くことも出来るだろうから、と言うことなのですね。こういったアドバイスは、さすがに多くのリサーチ経験がある人だけあって、大変に有り難いなと感じるところであります。

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ただし、アドバイザーいわく、せっかくの経験を得られる機会なのだから、インタビュー対象者によって二種類を使い分けてみるのも良いのではというコメントも合わせて頂きました。確かに、トライアンドエラーを思う存分出来る環境ではあるので、色々と試行錯誤してみるのも良いかも知れません。

ファイナルプロジェクトに関してアドバイザーとの打ち合わせ

ファイナルプロジェクト

ファイナル・プロジェクトの方向性などについてアドバイザと最初の打ち合わせを行いました。

以前にも書いた通り、私のアドバイザは、CIIDのイノベーションスタジオで働いている方でPeople Centered Researchの授業を受け持っている人でもあります。そういうわけですから、言ってみればCIID流のリサーチ手法を熟知しているわけです。私は今回のファイナル・プロジェクトを通して、ポートフォリオを充実させたいというよりは、ユーザリサーチ手法に関する理解を深めたいと考えている私に取っては、願ったりかなったり。

さて、初回ミーティングの内容を整理するとこういう感じ。

まず、最初のステップとしては、Research Objectiveの設定と、Research Guideをしっかり作りましょうということ。もちろん、手当たり次第にインタビューを行っても良いのでしょうが、どうしても話が発散してしまうだろうし、得体情報が得られるかどうかというと確率的に難しくなってしまい、効率があんまり良くないのではないかということ。

なお、Research Objectiveの設定に関しては下記の記事でも少し書いているので、興味がある方はお読みいただければ。

ddcph.hatenablog.com

ddcph.hatenablog.com

そして、Research Guideに関しては少し次の記事にも書いているのですが、どうやってリサーチを進めていくか、たとえばインタビューであれば、どのようなことを聞くのか、などということの検討ということですね。

ddcph.hatenablog.com

スケジュール的には、まずResearch ObjectiveとResearch Guideを作ってから、実際のインタビューを行いつつ、デスクリサーチを並行して行う感じかなと思っています。いろいろな方の話を聞いてみたいので、今週末以降でインタビューに協力してもいいという方は是非コンタクトいただけると大変助かります。

そしてドキュメンテーションをきちんとするようにとのこと。たとえばブログでもでもいいだろうし、Evernoteでもいいかもねみたいな話があったのだけれど、私の場合はすでにこのブログがあるので、ここで途中経過などを整理していけたらいいかなと思っています。

デザイン思考の限界と可能性

デザイン

コペンハーゲンに来られた某先生と話をしていた際に飛び出た話題なのですが、昨今、デザイン思考って世間で過剰評価されているのではないかと思います。世の中を見渡して見渡してみると、猫も杓子もデザイン思考だという感じで、イノベーションに必要なのはデザイン思考だ!デザイン思考さえあればイノベーション創出し放題だ!なんて論調さえ聞こえてくるのですが、デザイン思考はそこまで万能ではありません。

デザイン思考を実際に使うためには、色々と制約もあるはずですが、そのあたりがうまく認識されていない可能性があるのではないかと思います。そこで、デザイン思考の導入を検討する前に、この辺りを認識しておく必要があるよねという点について、私が思いつくあたりでいくつか書いておこうかと思います。

なお、本稿では私が思いついた点を3つ程挙げますが他にも色々と注意点があると思います。こういう点も注意が必要だなど他にありましたら是非教えて頂きたいです。

トピックは自分で決めなければいけない

デザイン思考のプロセスでは、ユーザを観察したりインタビューを行ったりして、ユーザを理解するところから始まります。では、観察したりインタビューするユーザーはどうやって選べば良いのでしょうか?

例えば、台所用の洗剤など、生活消費財などを作っている会社の場合であれば、対象となるユーザー、観察すべきシーンはある程度明確かも知れません。あなたのキッチンを見せて頂けませんか?とお願いすればいいでしょうし、料理をしているところや、片付けをしているところを観察させて頂ければ何らかのヒントが見つかる可能性も高いはずです。

一方で、例えば精密加工技術だとか、映像処理に関する技術、特殊な接着剤など何でも良いのですが、なんらかの技術を持っている場合に、これを活用して何らかのイノベーションを起こしたいと考えている場合。ユーザーを観察するだとかインタビューをすると言ってもどこに集点をあてていいものかを中々判断する事ができません。

これはスタートアップなどでも同じ事が言えます。スタートアップの場合は、参入すべき市場も、独自技術も持ち合わせていない事が多いですから、ユーザー選定に関するヒントはもっと少ないかも知れません。この場合は、自分たちの直感を信じるといいますか、自分たちが興味のある分野を、とりあえずの取っ掛かりとしてユーザ調査を開始して行くことになるのかと思います。

いずれにせよ、デザイン思考では、イノベーションを起こそうとする分野を選定するための方法を提供しているわけではないので、この部分を何らかの方法で決めていく必要があります。

新しい市場を開拓する事には向いていない

デザイン思考は、はじめにユーザーありきでプロセスを進めて行きます。これはつまり、新しい市場へのアプローチには向いていないと言うことであり、既存市場向けのイノベーションが中心になってしまいがちだという事でもあります。

例えば、名著イノベーションジレンマの中には、ディスクドライブ市場の淘汰の歴史が出てきます。その中のひとつのエピソードとして、5インチドライブを作っていた会社の研究所が3.5インチドライブのプロトタイプを開発した際に、5インチドライブのユーザ企業に対してニーズ調査を行ったところ、3.5インチドライブは不要であり、必要なのは大容量、高信頼性など、従来製品の性能向上だという調査結果が出てきて開発が中止されたという話が出てきます。このエピソードの結末は、3.5インチドライブは従来の5インチドライブユーザではなく、もっと小型なコンピュータを作って要る企業から必要されているという事であり、彼らはリサーチ対象を間違えたと言うことなのです。 

イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press)

イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press)

 

イノベーションを創出するためのアプローチとしては(1)ユーザーに製品を合わせて製品を改善する方法と(2)製品に合うマーケットを探す方法があるわけですが、デザイン思考はまさに(1)の方法です。これはつまり、全く新しいマーケットにおいて自社の製品が受け入れられる可能性を探索しなければならないという場面においては他のアプローチを採用する必要がある事を示しています。

開発中の段階からユーザを巻き込む必要がある

デザイン思考のプロセスにおいてはプロトタイピングを非常に重要視しています。開発プロセスにユーザを巻き込んで行く方法については、リーンスタートアップなどでも同様ですので、重要性を改めて強調するまでも無いとは思います。

リーン・スタートアップ

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しかしながらスタートアップなどであれば比較的柔軟に対応出来るとは思いますが、特に大企業においては、ユーザーを開発プロセスに巻き込むって、口で言う以上に難しい事が多いのではないかと思います。

何かトラブルがあってユーザに迷惑をかけてしまった場合にどうするのか?そもそも開発中の製品情報というのは機密中の機密であるはずだが、それを外部に出してしまって大丈夫なのか?何処かから情報が漏れてライバルに真似されてしまうのではないか?などなど、考えればキリがありませんし、特に日本の大企業においてはこれらのハードルをクリアするのは容易ではないのではないかと思います。

もっともこの部分は契約次第でなんとかなる部分でもあると思います。例えば、デザイン思考を含むプロセス自体を外注してしまって、会社の外、言ってみれば長崎の出島のような場所を作ってイノベーションに取り組むなどでしょうか。ジョイントベンチャーを作って云々というの一つの方法かと思います。いずれにしてもデザイン思考に取り組むためには、社内において、どのようなスキームでプロセスを進めて行くかを予め検討しておく必要があるでしょう。

おわりに

以上、デザイン思考に取り組む前に検討しなければならない事項について述べました。

デザイン思考自体は非常にパワフルかつ柔軟性の高いツールですし、製品開発だけでなく、例えば社内の購買プロセスや、リクルーティング活動の刷新、新しいマーケティング手法など、様々な事に応用する事ができます。近年ではデザイン思考について解説している書籍やWebサイトも多くありますので、制約を認識したうえで取り組めばビジネス面において大きな恩恵を享受する事ができるのではないかと思います。