デザインダイアローグコペンハーゲン

デンマークのコペンハーゲンでのデザイン留学を通して考えたこと

デザイン留学説明会へのご来場ありがとうございました

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デザイン留学説明会が無事に終了しました。当初想定していた以上に多くの方が来てくださり、残念ながら全員と直接お話しすることはかないませんでしたが、本当にありがとうございます。また会場を提供してくださったDesignitさん、ありがとうございました。

今回のイベントではPeatixを使って参加者を募集しました。当初想定していた参加者数は10か15ぐらいだと思って居たのですが、最初に設定した定員はあっという間に埋まってしまい、慌てて30まで増やしたものの、それもやはりすぐに埋まってしまい、それ以降も参加したいというメールを頂戴するなど、こんなマニアックなイベントにこれほどの需要があったのかと驚かされました。

これも近年のデザイン思考だとかサービスデザインを始めとする、デザインという領域への注目の高まりからくるものだと思っています。これは純粋に留学先分野として面白そうだというものもあるでしょうし、今後社会の中で実際にイノベーションだとかを起こしていくためにデザインの力が注目されているということもあるのだろうなと思います。

さて、実際の内容についてですが、トップバッターはスタンフォード大のFさん。諸々の都合でリモートでの講演となりましたが、スタンフォード大学の紹介から、Design Programme学科(来年からはDesign Impactと改名されカリキュラムの方向性も少し変わるようです)の紹介。アメリカのデザインスクールと言えば大人数制という勝手なイメージがあったのですが、スタンフォードのそれはそうでもなく、10人程度の少数精鋭で、それも大変面白い経歴の人が集まっているという印象でした。1年目と2年目合わせても20名程度なので、人数規模的にはCIIDと同じ程度ですね。違いとしては、それぞれの学生に作業スペースが与えられている点でしょうか。おそらくカリキュラムのというか教育方針の違いなのかなとも思いますが、CIIDのカリキュラムには一人でのプロジェクトが卒業制作を除いて存在しません。このあたりが面白い違いだなぁと思いました。

続いてTUデルフトのKさん。彼は現在まさに留学中で一時帰国中のお忙しい時間を使って発表してくださいました。TUデルフトはスタンフォードのコースとは対象的に大人数のコースで、同級生全員を把握するのは難しいというレベルだそう。また、発表の中では実際に行ったプロジェクトをビデオを使いながら面白く紹介してくださって非常に興味深い発表でした。実際のデザインプロセスをトレースできたというか。

最後はKAISTに留学してらっしゃった。Oさん。彼は交換留学で1年間滞在してらっしゃったという事ですが、他の二人の発表者とは違う雰囲気の大変面白い発表をしてくださっていました。留学志望の方からお話を伺っていると正規留学だけでなく交換留学で考えてらっしゃる方も結構いらっしゃるので、こういう角度からのトークも非常に新鮮で面白かったです。

今回のイベントの登壇者は三名だけでしたので、来場者の方の中には自分の志望している大学に関する発表が無かったという方も多いかと思いますが、デザイン留学の雰囲気だとか、学校選びについてこういう軸もあるんだという点を少しでもお伝えできていれば良かったのでは、と思っています。

来年以降の開催などは不明ですが、私自身が主催するかどうかは別にして、何らかの形で経験などをお伝えする機会が作れると良いなと思います。

デザイン留学説明会を開催します

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デザイン思考やサービスデザインなどの言葉を耳に挟む機会が増えるにつれ、デザイン留学に興味を持つ方も増えてきたのかなと感じていますが、そういった方々とゆるーく情報交換などを出来る機会があれば良いなとの思いから、下記のようなイベントを開催させて頂く事になりました。

peatix.com

実はこのイベント、昨年に引き続き2回目となります。昨年はInteraction Design Circleの中の人と、Design+の中の人が中心となって企画運営をしてくださいましたが、今年は私のほうが準備にかける時間の都合がつきそうと言う事で引き継がせて頂いたと言う形になります。

内容としては、去年と同様、留学経験者から各学校のカリキュラムや授業の内容についてプレゼンをして頂き、それに関して質疑応答やディスカッションを行うことができれば良いと思っています。現在のところ、下記のような学校の卒業生が話をしてくださります。

  • スタンフォード大学(アメリカ)
  • KAIST(韓国)
  • デルフト工科大(オランダ)

アメリカ、ヨーロッパ、アジアを代表するデザインスクールの話を一度に聞く事ができる大変貴重な会となります。私自身、実際に留学する前に、アメリカ(スタンフォードやイリノイ)、ヨーロッパ(RCAやAalto、CIIDなど)、アジア(香港やシンガポールなど)のデザインスクールを比較検討した事がありますが、地域によって教育と言うかカリキュラムに対する考え方が異なり、自分に合う大学を探す上でも、それぞれの地域の学校の方向性を把握しておくのは大変重要でしょう。

また、本説明会はデザインスクール出身者の交流会も兼ねておりますので、上記の大学以外にも、デザインスクール関係者が多く来場される予定です。登壇者への質問はもちろん、来場者への質問、交流なども大歓迎ですので、将来的にデザイン留学を検討されている方は是非お越し頂ければと思います。

ヒカリエでの展示で学んだ事

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もう終了から二ヶ月以上経ってしまいましたが下記の通りヒカリエでの展示を無事に終えました。ご来場頂いた皆様、ありがとうございました。

ddcph.hatenablog.com

さて、今回の展示を通して、個人的に結構な学びがあったのでいくつか書き起こしておきたいと思います。

多くの人と話すことでストーリが作られていく

これは今回の展示に限った話ではなくて、CIIDにおける各プロジェクトでもそうなのですが、作ったものを目の前にして、関係者やステークホルダー、もしくは普通の人達だったりに対してコンセプトの説明を行うという事が多々あります。

このコンセプトの説明がプレゼン形式である場合は、発表は大抵の場合キーノートのスライドを使用して一回限りであるから、そこあまでの作り込みが全てです。しかしながらエキシビジョン形式の場合、自分たちのブースにお客さんが来てくれるわけですから、自分たちのコンセプトを説明する機会はたくさんあるわけです。そうすると、人と話をする度に、ちょっとずつ説明内容がブラッシュアップされていくことがあります。

このコンセプトは、こういう風に説明したほうが受け入れられやすいなとか、こういう順序で話をしたほうが説得力が増すなとか。こうして多くの人と話をしていくうちにいつの間にか説得力のあるストーリーが出来てしまっていて、この現象って凄く面白いなぁと思うんです。

普段の仕事においても何らかの提案や発表を行う機会って結構あると思うんですが、この現象って仕事にも結構活かせるんじゃないかなと。最終的な意思決定者と話をする前に、隣のプロジェクトのメンバーと話をしてみたりとか、気軽に話ができるクライアントやパートナーさん、もしくは想定顧客でも良いのかもしれませんが、今こんなことを考えてるんだけど、と雑談ベースで話をしてみるとか、もちろんプロジェクトの性質によっては難しい事もあるでしょうが、人と話をするということでコンセプトやストーリーをブラッシュアップ出来るとするならば、やってみる価値は多いにあるのではと思うのです。

展示にはコンセプト作成とは異なるノウハウが必要

今回、ヒカリエで展示させて頂いたのですが、私は普段仕事があるわけですから常に展示作品の側に立って説明を行う事は出来ません。ですので、せめて出来る限りベストなコンディションを維持して、もし何らかの異常があればそれを検知して即座に現地に駆けつけて何らかの対策を取りたいと思っていました。

そのためにいくつかの仕組みを取り入れていました。まずは長期間動作に関して。元々作成した作品は、5分間の説明の間だけ動けば良い、というシロモノでした。これがどういうことかというと、まずバッテリーの心配をしなくて良いわけです。5分間だけ動けば良いわけですから、適当なモバイルバッテリーを接続しておけば、さすがにこれを使い切る事は出来ないわけです。しかしながら今回の展示は約二週間。展示会場のスタッフに、一時間ごとにバッテリー交換をしてくださいとお願いするわけにも行きませんから、なんとかして2週間バッテリーを持たせなければなりません。

そこでArduinoとXBeeのスリープ機能を利用して消費電力をとにかく抑えることに。そしてバッテリーとしては下記のIoT機器向けのものを購入。 技術的な情報に関してはそのうち書ければと思っていますがこの2点で長期間動作を実現しました。

それからもうひとつ、今回の展示においては、デバイスの状況をリアルタイムでリモート把握するシステムを作りました。仕組みとしては簡単で、いわゆるハウスキーピングデータをNode.jsのサーバに投げつけまくるのですが、これによって現在デバイスが動いているか、それとも動いていないかだとか、サーバの状況がどうなっているか、デバイスにトラブルが起こっていないかなどという情報を知る事ができ、メンテナンスに非常に役立ちました。トラブル発生時だけでなく、この仕組みがあることでデバイスが正常に動いているという事を確認することができ、私の精神的な安定にも寄与していました。

今後の展開を語れるようにしておく

展示会場でお客さんから聞かれる事の多くに「今後、これをどうしたいの?」がありました。おそらくお客さんが喜ぶ答えは、これをプロダクトとしてブラッシュアップしてビジネス化を推進していきますだとか、アート作品としてどうのこうのしたいだとか、そういう答えなんだろうなぁとは思うものの、現時点でそういう予定は全くありません。

それはたぶんこれがCIIDにおける課題として作った作品であるからだとか、そもそも自分としてアーティストを目指したいとか注目されたいと言った野望が無いからというのはあるからかもしれませんが、こういった場に展示する以上、お客さんはその先に期待してくださるのだと思います。これは大変ありがたいことで、せっかく作った物をお蔵入りするよりは何らかの機会があるに越したことはありません。とはいえ私自身現時点でノーアイデアなので、もし将来の方向性などについて雑談やディスカッション等に付き合ってくださる方がいらっしゃれば気軽にコンタクト頂けると嬉しいなあと思います。

渋谷ヒカリエにNews Globusを展示しています

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YouFab Global Creative Awards 2016というデジタルファブリケーションのアワードがあります。これはデジタル工作機械を用いてつくられた新時代のものづくりを評価するグローバルアワードでデジタルとフィジカルなものづくりの高度な連携によって生まれるクリエーション・発明を評価し、表彰するものだそう。

昨年作成したNews Globusをこのアワードに応募したところファイナリストに選んでいただき、ヒカリエにて展示する機会を頂くことになりました。

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展示場所は渋谷ヒカリエ8階にありますCUBE 1, 2, 3で2017年の3月8日から3月19日まで展示されます。時間は11時から20時までで、最終日は17時で終わってしまうとのこと。

渋谷にお越しの方は是非見に来てください。

コペンハーゲンからストックホルムへ0泊3日旅行

デンマーク滞在も残り少し。最後の旅行という事でストックホルムに行って来ました。これで、オスロ、ストックホルム、ヘルシンキと、北欧四カ国の首都を制覇です。

コペンハーゲンからオスロまでの行き方としては、バス、電車、飛行機があります。飛行機も前々から予約しておけばそれなりに安い値段で乗れるようですが、直前という事であれば、バスか電車が選択肢になります。私は今回、行きはバス、帰りは電車をチョイスしました。

コペンハーゲンからストックホルム行きのバスはコペンハーゲン中央駅の南側にあるバス乗り場から21時10分に出ています。ストックホルム着は朝の6時過ぎなので、9時間ばかりの旅路になります。

ストックホルム中央駅の様子。早朝なので真っ暗です。寒い。

有り難いことに中央駅の中のスターバックスが営業していたので、町が動き出すまで仕事をすることにしました。

その後、行ったのはヴァーサ博物館と呼ばれる施設。ここは400年前の戦艦ヴァーサ号がそのまま保存されている博物館です。

ヴァーサ号については下記のサイトを見て頂くのが良いかもしれない。

wired.jp

次に向かったのは市庁舎。

ここはノーベル賞授与式のバンケットが行われるという事で有名です。市庁舎の中に入るためにはガイドツアーに参加する必要があり、ツアーは一時間に一回のペースで行われて居ます。

ランチには、こちらのブログで紹介されているニシンのフライをいただきました。

miatravel.jp

その後は、ノーベル賞博物館へ。と言ってもここはそれほど特筆すべきものは無いかな。名物はノーベル賞晩餐会で出されるアイスクリーム。晩餐会で出されるものと同じ、ってだけで特別美味しいというわけではないのだけど。

その後は、ストックホルム名物の円形図書館に行ったりして帰路につきます。

1日あれば早足とは言え主要なスポットを回れるのもストックホルムの良いところですね。

帰りはストックホルム駅を23:09発、マルモ乗り換えでコペンハーゲンに8時前に到着する電車で。

寝台車は3段ベッドでした。そんなに広いわけじゃないけれど、横になれるのは良いですね。バスよりも楽かも知れません。

と言うことで無事にコペンハーゲンに帰って来ました。コペンハーゲンとストックホルム、同じ北欧とはいえ似てる場所もあれば違う場所もあって色々面白い。そして個人的にはやはりコペンハーゲンが好きだな等と思ったのでした。

人はお得感に弱い

Food

デンマークで何か面白いものはあった?というのは日本に戻って来てよく聞かれます。正直なところ、デンマーク見聞きしたものの大半は私に取って新しく、大変面白い物なのですが、その中でもひとつ紹介するとすれば、TooGoodToGoかなと思います。これはデンマークの企業が行っているアプリで、このブログでも過去に何度か紹介しています。

ddcph.hatenablog.com

ddcph.hatenablog.com

このサービスを改めて簡単に紹介すると、レストラン閉店時に残った料理と、消費者をマッチングするアプリです。レストラン側としては残った料理をマネタイズすることが出来るうえに食料廃棄も減らす事ができますし、消費者としては安く料理を手に入れる事が出来るうえに、食料廃棄の削減に貢献する事ができます。

上記のような事情ですから、コペンハーゲンでは多くの人がTooGoodToGoを利用しておりまして、少なくとも我々CIIDの学生の間ではほぼ全員が愛用していると言っても過言ではないほどの必須アプリとなっていました。

ところが、まわりの学生に話を聞いてみても、食料廃棄の削減に貢献するためにアプリを使っているという人はほとんど居ません。もちろん彼らとしても自分の行動が食料廃棄削減につながっているという事は意識しているものの、アプリを使う目的としては安く食べ物を手に入れると言うことなわけで、当たり前だと言ってしまえば当たり前かもしれませんが、これって非常に面白い事だと感じました。

日本でも、お米を残すとお百姓さんに怒られるだとか、アフリカでは子供が飢えに苦しんでるから食べ物を残すなだとか、食事を残す人に対して様々な方法で諭し合いますし、食料を無駄にしてはいけないというのは皆、頭の中ではわかっています。この状況というのは日本に限った事ではなく、デンマークやヨーロッパでも似たような状況なわけですが個々人が食料廃棄削減に対して積極的な行動を取っているかというと決してそうではなく、むしろデンマーク人は日本人以上に躊躇無く食材を廃棄している印象すらあります。

だけれど、食料廃棄削減に貢献することがオトクにつながるようにサービスをデザインする事によって、結果的に多くの人が積極的に食料廃棄削減に貢献しようとするわけで大変うまくデザインされているなぁと感じます。実際、TooGoodToGoのサイトを見ても、安く美味しい料理が手に入る事を全面に打ち出して居るんですよね。

そういえば、この種の社会貢献的な企業で思い出すものにWarby Parkerがあります。

www.warbyparker.com

彼らは彼らのメガネが売れた個数に応じて、売上の中から途上国に寄付を行っているんですよね。これ自体は大変価値のある事ですし彼らのビジネスの仕組みとしても大変うまくデザインされています。しかしながらこれはWarby Pakerでメガネを購入する多くの方が知っている事でありながらも、彼らがここでメガネを購入する理由ってそこには無く、価格が安い事であったり利便性だったりします。

こういった形で社会や環境に貢献する企業は既に色々とあるわけです。だけど今後さらに様々な業態で出てくるでしょうし、こういった形でのブランディング手法、マーケティング手法が重要視されて行くのかもなと思います。

エキシビジョンについて

日本に帰って来て約一ヶ月が経ちました。ファイナルプロジェクト期間中は忙しくてブログどころじゃなかったのですが、帰国後落ち着きはじめましたので、ブログを再開して留学を徐々に振り返ったり、デザインに関して思うところを書いていこうかなと思っています。

さて、CIIDでは卒業式のあとにエキシビジョンという物が開催されます。エキシビジョンとは日本語にすれば展示会でしょうか。卒業制作として作成したものを、外部の方に見て頂く機会があるわけです。

金曜日と土曜日の二日間、普段我々が教室として使用しているスペースが展示会場に早変わりし、多くのお客様がいらっしゃいました。ちゃんと数えたわけではないけれど、1000人近い人が来てくださったんじゃないかな。

面白いなと思うのは、エキシビジョンの受付にて来訪者に目的を伺って、わかるようにシールを貼ってもらうシステムになっていると言うこと。シールの種類は下記のような感じ。

  • OB/OG
  • デザインに興味がある
  • リクルーティング

つまり、展示している側からすれば、その方が貼っているシールを見れば、OBOGなのか、リクルータなのか、一般の方なのかがわかる仕組みなのです。これは非常に良い仕組みだなと思いました。

自分たちが作ったモノの説明をするのはもちろんとしても、対象が一般の方なのか、リクルータなのかによって、説明の仕方やアピールの仕方が異なって来ますものね。

ちなみに展示の様子は下記のような感じ。私自身が暇な時を見計らって写真を撮影したので、人がまばらであるように見えますが、混雑時は文字通り人でごった返していました。

私自信も、自分のプロダクトについて多くの方に説明していただきましたが、自分自信でも面白いなと思うのは、多くの人と話をするにつれて、話の展開の仕方がこなれて行くというか、こういう風に話をすればウケるというのが見えて来るんですよね。なるほどやはり人と話をすることは大事なんだなぁ。