デザインダイアローグコペンハーゲン

デンマークのコペンハーゲンでのデザイン留学を通して考えたこと

実世界を目指すデザインで重要な3つのこと

デザインとは何かという話をする時、多くの人がイメージするのは、Webデザインだったり、DTPだったり、UIデザインだったりするんじゃないかなって思います。つまり、お客さんやユーザーの目から見える部分をかっこ良くする仕事がデザインである、と。多分これが世の中の80%ぐらいの人からの認識。

残りの15%ぐらいのちょっと知ってる人だったら、デザインって言うのは見た目だけの話じゃなくて、プロダクトやサービスがどのようなユーザーの、どのような問題を、どうやって解決するのか、どのような新しい価値を生み出すのかを考える事だって言ってくれるんじゃないかなと思います。

だけど実際のデザイナの仕事には、プロダクトやサービスををどうやって作るか、どうやってユーザーに届けるか、どうやって持続させるかを考えるところまでが含まれています。これは、私のようにビジネス寄りのバックグラウンドがある人を除けば、デザインスクールに来ている学生でも中々意識できていない事が多いのです。

例えば、Apple社のデザイン最高責任者であるジョナサン・アイブの下記のように述べています。

Apple’s goal isn’t to make money. Our goal is to design and develop and bring to market good products

日本語に訳すとこんな感じでしょうか。

アップルの目的は利益を上げる事ではありません。私達の目的は、素晴らしい製品を、デザインし、開発し、そしてそれを市場に出す事です。

素晴らしい製品をデザインし、開発して、マーケットに出そうと思うと、結局のところお金の問題というのがつきまとってきます。デザインスクールにも関わらず、ビジネスに関するミニMBAとでも言うべき授業が行われているのは、主にこういう理由。

では、ただのプロジェクトとしてのデザインではなく、ビジネスとして成立する製品やサービスをデザインをする上で重要な、検討しなければならない事は何か。講義の中で幾つか話がでたのですが、下記の3点なのかなと思います。

ユーザ価値とコストのバランスは適正か

ユーザに何らかの価値を届けられる可能性があったとしても、それを使用するためのコストが高ければユーザにとってはあまりうれしくありません。

商品やサービスの値段であればわかりやすいのですが、コストというのは金銭的な問題以外に様々な要素が含まれています。

例えば、DropboxやGoogleドライブというのは大変便利なしくみですが、中身はSubversionやGitと同じようなものですよね。しかし一般ユーザがファイル管理のためにそれらのバージョン管理ソフトを使うかというと、そんなことはあり得ません。

製品のポジショニングとタイミングは適正か

当たり前と言ってしまえばそうなのですが、我々がデザインしようとする領域には既に他のプレイヤーが存在する場合があります。それらプレーヤーと正面からぶつかり合うのか、それとも異なるポジショニングとを取るのかというのは非常に重要で検討しなければならない問題です。

大きな会社の場合、例えば銀塩カメラの会社の幾つかがデジタルカメラへの参入が遅れたように、自社の既存製品と食い合わないような配慮を求められるかもしれません。

また、タイミングに関しても重要です。いくら素晴らしい機能を持っているからといって今からFacebookの競合として参入する事は得策とは言えないでしょうし、誰もスマホを持っていない時代にTwitterのようなサービスを開発してもほとんどのユーザーには見向きもされなかったはずです

ユーザーと顧客は誰か

実際に商品を使用する人と、商品を購入する人が異なる場合というのは多くあります。例えば子供用のおもちゃなどがわかりやすい例でしょうか。実際に使用するのは子供だったとしても、購入を決断するのは親等であったりします。子供の目線からみていくら魅力的でも、大人からみて魅力的でなければ購入につながりにくいのです。

例えば、Wiiの話は非常に有名ですが、開発にあたっては「母親に嫌われないこと」を目指したとのこと。

matome.naver.jp

他の製品でもユーザーと顧客が異なる場合というのは往々にして存在します。例えばDropboxやEvernoteに代表されるようなフリーミアムモデルのビジネスですと、お金を払ってくださるプレミアムユーザーの存在というのが非常に重要です。

また、前述したWiiの場合ですと、別の見方も出来ます。つまりゲーム機ビジネスの場合、ソフトウェア開発者をいかに取り込むかが重要なわけです。以前、PS陣営と任天堂陣営との違いで良く言われていたのは、任天堂のハードウェアはゲームの作りやすさも重視している、と言うこと。

誰の方向を向いて製品を作りこんで行かないと行けないかというのは製品やサービスの特性によって異なるので、一概には言えないのですが、考慮しなければならない非常に重要な点だなと思うのです。

ちなみにビジネス関連の授業内容の一部は既に下記のような記事で紹介しているのでご興味がある方は是非御覧ください。

ddcph.hatenablog.com

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