デザインダイアローグコペンハーゲン

デンマークのコペンハーゲンでのデザイン留学を通して考えたこと

デザインforリアルワールド

今週からDesign For Real Worldという授業が始まっています。これが何かというと、一言で説明するならばMBAの簡易版のような内容。つまり、会社の仕組みであるとか、ビジネスモデルの組み立て方であるだとか、会社を立ち上げる際に必要となる知識を学んで行くわけです。

デザインスクールなのにビジネスの授業があるの?とお思いかも知れませんが、CIIDを始め多くのデザインスクールでは、言ってみればイノベーションの起こし方を教えて居るわけであり、そのためにはクリエイティブ、テクノロジ、ビジネスそれぞれの知識や経験だけでは不十分で、複合的な知識、経験が必要であると考えられています。

そのためCIIDのカリキュラムにおいても、クリエイティブ分野の授業もあればテクノロジ分野の授業もあり、ビジネス分野の授業もある、という構成になっています。そしてそれら基礎的な授業で学んだ内容を活かせるようなデザイン分野の授業もあるわけです。

さて、今週の授業内容に関してですが、ビジネスをテーマとして本当の基礎の基礎から始まって居ます。しかしながら、いくつか面白いワークショップが取り入れられて居るのもデザインスクールらしいと言えばデザインスクールらしいなと感じます。

書きたい事は色々あるのですが、まずはビジネスの講義の初日に行われた内容を少し紹介したいと思います。

企業の中身を考える

冒頭の写真は企業の中にどのような仕事があるか、それらがどのように繋がって居るかを考えましょうというワークショップが行われた様子です。

まずは各学生がポストイットに思いつくままに企業活動に関連する単語を書いていってホワイトボードに貼っていきます。人事だとか、経理だとか、デザインだとか、研究開発だとか、生産だとか、工場だとか、営業だとか、資材だとか、商品だとかクライアントだとか、投資家だとかですね。

一通り書き出せたな、と思ったらそれをグループに分類して行きます。例えば、デザイングループの中には、グラフィックデザインの人も居ればプロダクトデザインなんて職種もあったりしますが、大枠ではデザインという事でグルーピング出来るよね、とそういった具合でしょうか。

その後は、それぞれのグループごとに他のグループとの関連性と役割についてディスカッションしていきます。例えば関連性については、デザイナはお客さんと直接やり取りすることって無いよね?じゃぁ実際にやり取りするのは営業やカスタマーサービスの人たちだね、とか。営業の人たちが直接工場とやり取りする事ってあるのかな?あるかも知れないけど、主にやり取りするのは製品開発する人たちだよね、とか、こういった具合に。

一通り関連性が整理できたところで次は役割について考えていきます。教授が役割について「営業の人達が優先することって何かな?」って聞いてくるわけです。当たり前だけれど、売上だとか、利益だとか、って言う声があがるわけです。次に聞かれたのが「じゃぁデザインの人達が優先することは?」と言うもの。良い製品を作る事という声があがったものの、ここでいう良い製品とは何か?という事が問題になるわけです。会社の利益になる物が良い製品なのか?ユーザの課題を解決する製品が良い製品なのか?

会社の中で働く以上、会社の利益を考えるのは当然なのですが、そればかりを優先してしまうとユーザの課題解決に疎かになってしまう可能性もあるわけです。かと言って、ユーザの課題を解決することばかり考えると、会社の利益が疎かになってしまい営業と対立してしまう恐れがあります。ではどうすればよいか?等をクラスでアイディアを出しあいディスカッションを行ったりしました。おそらく、部署間の利害調整問題というのは多かれ少なかれ実際の企業に多く潜んでおり、それらをこういう形でディスカッションさせるのは面白い方法だなと感じました。

ビジネスモデルと差別化要因

次に行われたのはビジネスモデルについて。幾つかの有名な会社のビジネスモデルを解説した後に、それぞれが興味のある会社のビジネスモデルと、差別化要因を調べてディスカッションしてみましょうというワークショップが行われました。

皆それぞれ、思い思いの会社、例えばUberだとかspotifyだとか、Arduinoだとかを選択して、ビジネスモデルを調べて行くわけです。それらの企業がどういったサービスを提供しているか当然ある程度知っているわけですが、ビジネスモデルはなんとなくしか知らない事が多いし、差別化要因とまで行くと中々普段は意識しないのでは無いでしょうか。

例えば、Spotifyの場合、会員がお金を払って音楽を聞き事が出来るのは皆知っていると思いますが、競合他社に対してどのような差別化要因があるかだとか等は、意識して調べないと中々気がつかないものだと思いますし、そもそも調べたところで差別化要因がわかるとも限りません。ちなみに調べるのに使える時間は30分でした。そのため、どうしても中途半端な調査になってしまう場合があります。

例えばArduinoの差別化要因がオープンソースだとか、コミュニティだとか、アクセサリだとか言ったところで、それらを活用出来る競合他社が何故出てこないの?だとか、そもそもそれは本当に差別化要因なのか?などいくらでも議論の余地があるわけです。こうした調査とディスカッションを通して企業のビジネスモデルだとか差別化要因を考えさせるというのは、教科書を通した学びだけでは不可能ですし、このような環境で議論を通して学べるというのは面白いですね。