デザインダイアローグコペンハーゲン

デンマークのコペンハーゲンでのデザイン留学を通して考えたこと

アイディア発案者が課題検証までやる試み

ddcph.hatenablog.com

以前、経験と共感についての記事を書いたのですが、しかし、ここで問題に気が付きます。

経験の共有は簡単ではない

学校のプロジェクトのような場合であれば経験を共有してそこから課題を見出すと言うことが容易に可能です。だけどこれが会社の場合だったら?上司から「新製品のアイディアを出せ!」と言われたとして、同僚同士なら似たような経験を持つ可能性も高いでしょうが、そこで共感が得られたアイディアを上司に提案しても共感される可能性は低いのではと思うのです。

となると方法としては、下記の3パターンあたりでしょうか。

  • 客観的なデータをもとに課題を説明する
  • 課題の存在を自分たちで検証する
  • 他人の経験を信じる

客観的なデータが入手可能であれば問題はありませんが、実際にはそういった場合って少ないと思います。明確な課題がある場合って、既に多くの人が解決を試みている可能性が高くなります。

課題の存在を自分たちで検証しようにも、多くの場合はさらなる時間や費用が必要となる事が多いでしょう。費用に関しては当然ですが、従業員の時間と言うのも会社に取っては貴重なリソースなわけです。部下からの提案に対して、それらを許可する事ができる上司、会社ってそんなに多くないのでは、と思います。

じゃぁ部下の経験からくる提案を信じるかと言うところなのですが、これはこれで難しいでしょう。ワンマン社長だったら良いのかもしれませんが、一般的に責任者は、そのまた上司であるとか、株主や取引先だとかステークホルダーに説明責任を追います。部下が「これが良い」って言うからGOを出しましたと説明したところで、周りを納得させるのは中々難しいのでは?と思います。

アドビキックボックスの試み

こういった問題に対して、世の中の会社は色々な取り組みを行っています。有名なものだとAdobeのKickboxでしょうか。これは従業員に対して小さな箱を配り新規事業のテストをさせるというもの。

www.dhbr.net

あまりにも有名過ぎるので紹介しませんがGoogleの20%ルールや3Mの15%ルールもこれに相当すると言えるかもしれません。このように、アイディアの発案者にある程度の裁量を持たせる事がアイディアの実現には必要なのかも知れません。

なお、デザインリサーチの現場では、決定権を持つ人を最初からチームに引き込むと言う事も多く行われているようですが、大きな組織では中々難しい面もあるだろうなと思います。