デザインダイアローグコペンハーゲン

デンマークのコペンハーゲンでのデザイン留学を通して考えたこと

デザインスクールが抱えるジレンマ

以前から、私が気になっているトピックがある。それは、異なる目的を持った人同士でプロジェクトを行う際に、どうするのが良いのか、と言う話。

ddcph.hatenablog.com

たまたま教授と話をしている時に、ふとそういう話題を振って見たところ「それは、うちにかぎらず、すべてのデザインスクールが抱えている課題なんだよ」と仰るではないか。どうやら、教授も同じ問題意識を持っていたようだったので、それについて話をしてみた。

ある学生は、デザインスクールで光り輝く物を作りたいと思うだろう。その一方である学生は、デザインスクールで新たな知識やスキルを学びたいと考えている。これはどちらが間違いだとか、どちらが正解と言う事では決して無い。多くの学生は卒業後に就職活動を行う。デザイナとしての就職活動でモノを言うのはポートフォリオだ。だからポートフォリオに詰め込むための作品として良い物を作りたいと言う気持ちはもちろんわからなくはない。一方で、就職活動する際に重要なのは自分に何が出来るか?と言う事でもある。だから後者の学生の気持ちもわかる。問題は、これらをどのように折り合いを付けるかと言う事なんだ。理想としては新しい事を学びつつ、良い物を作る事なのだけれど、実際にそれがとても難しい事は君も知っているだろう?だから、ある程度の妥協が必要なんだよ。実際にはゼロかイチかじゃないんだよ、と言うのが教授の弁。

妥協が重要と言う言葉が教授の口から出てくるのは個人的には驚きでもありましたが、実際にこれまでのプロジェクトを振り返って見るとあながち間違いでも無いなとも思うのです。とは言え、これで完全に腑に落ちたかというとそういうわけでもなく。

例えば、良い物を作りたいと思う人が居るのであれば、そういう人だけでチームを構成すると言うのもひとつの手なのかなと思うのですが、そうなるとそれはそれで、学校のプロジェクトとしてやる意味がそこまであるのかなと言う気もします。もちろん要所要所で教授の講評は頂けるにしても。そんなわけですからやはりこの問題に関しては、ある意味で、様々なバックグラウンの学生を集めているデザインスクールと言う組織が抱えるジレンマでもあるのだろうなぁとも思ったりするのでした。