デザインダイアローグコペンハーゲン

デンマークのコペンハーゲンでのデザイン留学を通して考えたこと

Research Objectiveの設定と方針の検討

下記のようにAssumption Mappingを行ったあとは、実際のクライアントからブリーフの説明を受けます。

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ブリーフについて説明を受けたあとは実際に図書館の中を見まわったり、取り組みに着いて司書さんから話を伺ったり等し、その後はチームメンバーでそれぞれが感じた第一印象を共有します。

個人的に受けた印象としては、思ったよりも児童向けのエリアだとか、外国人向けのエリアにも力を入れているんだなと言う事。例えば私が訪問した図書館では、図書館全体の20%程度が児童向けに使われていました。

私自身、日本では最近図書館にあまり行っておらず、子供の頃に親に連れて行ってもらった程度なのですが、図書館と言えば基本的には大人向けであって、児童書のコーナーって、そんなに大きくなかったイメージしか無いんですよね。ところが、ここコペンハーゲンでは、どこの図書館に行ってもそれなりのスペースが子供向けに用意されている。これは非常に大きな違いだなと思いました。

また、デンマークにはデンマーク人だけではなく、多くの移民が暮らして居ます。そういった方々に配慮してか、デンマーク語以外の書籍もそれなりに置いてありました。日本でも大きな図書館に行けばきっと外国人向けの書籍がそれなりにあるのでしょうが、決して大きくはないローカルな図書館でもこういった配慮があると言うのは、さすがだなぁとも思いました。

さて、こうしたチームの個々人が感じた印象を共有してResearch Objectiveの設定を行います。Research Objectiveの設定については下記でも少し触れています。

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また、それと同時に、どうやってそのResearch Objectiveを達成するかの検討を行います。これに関しても下記に書いてあるのでご興味があれば御覧ください。

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このようにしてResearch Objectiveと方針を設定したあとは、その方針に従ってデザインリサーチを進めて行きます。

Assumption Mappingの具体的な作り方について

下記のようにAssumption Mapingについて書きました。しかしながら、仮説を作る対象を企業のキャッチフレーズとしたのが、あまり良い例ではなかったかなと思ったので、少し補足します。

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実際には、こういったコーポレートアイデンティと言うよりも、ミッションをもとに仮説を作ります。

例えば私達のクライアントであるコペンハーゲンの図書館のミッションはGetting Smarter Togetherです。直訳すれば「一緒に賢くなる」あたりでしょうか。図書館と言う施設を思い浮かべた時、一番に思い浮かぶものは本棚かと思います。実際にコペンハーゲンの図書館にも多くの本棚があって、市民は自由に本を読んだり借りたりする事が出来るようになっています。

だけど、図書館に本がたくさんあるなんていうことは、言ってみれば当たり前です。これらのリソースを活かして、市民にどうやって貢献していくかと言う点を検討した結果がGetting Smarter Togetherであって、市民に知識を提供して一緒にSmartになる事が図書館のミッションだと彼らは定義したのかなと思います。

さて、ここまでが前提。

プロジェクトの詳細なブリーフを頂く前に、Getting Smarter Togetherから連想するものを書き出して置くわけです。いったんプロジェクトを初めてしまうと、クライアントの取り組みに関する情報を色々と聞くことになります。そういった情報を聞く前に、イメージだけではありますが、こういった取り組みが出来るんじゃない、こういう取り組みをやっているんじゃないかと言うのををリストアップしておく事で、自分たちの持っているイメージと、クライアントの実態がどの程度かけ離れているか等を知る事も出来て、後々のリサーチをスムーズにすすめる事ができます。

デザインの仕事をする上で、バイアスをどう扱うかについては以前も少し触れましたが、いかにしてバイアスをコントロールするかと言う観点からもAssumption Mappingが有用に働くのではないかと思います。

ちなみに、他のクライアントを想定した場合にどうなるかを勝手に空想してみるとこんな感じでしょうか。

例えば、Googleから新サービスのデザインプロジェクトを受けることになったとしましょう。Googleのミッションはこんな感じですよね。

Google の使命は、世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすることです。

おそらく実際に仕事を受けるとしたら、先方の担当者からプロジェクトの期間だとか狙いだとか、諸々の話を聞く機会があると思うのですが、その前にAssumption Mappingを行うわけです。世界中の情報を整理するってどういうことだろうとか、世界中の人々がアクセス出来るってどういう状態を言うのだろうと。

さらに他の例を考えて見ましょう。デザイナの仕事領域は新商品開発に留まりません。例えば、会社の中途入社社員のリクルーティング活動のデザインと言うのもあり得ます。

そういったデザイン業務を受けた場合もやはり同様で、実際にその会社がどういった取り組みをしているかなどを調べる前にAssumption Mappingを行います。なお、調べる前にと書きましたが、その会社の事業内容であったり強みであったりはある程度調べる事が必要になるのかなと思います。もちろんそういった事を抜きにしてAssumption Mappingを行う事も可能なのでしょうが、その場合はどこの企業を対象としてもアウトプットが出てくるはずで、あまり意味の無いものとなってしまう可能性が高いのではないかと思います。

Assumption Mappingで始めるデザインリサーチ

仮想のピザ屋のサービスをデザインし終わったところで次のリサーチプロジェクトに進むわけですが、このリサーチ活動の中で最初に行った事がAssumption Mappingと呼ばれるものです。

Assumption Mappingとは日本語にすれば仮説マップの作成とでも訳せるでしょうか。特定のテーマに対して自分たちが現時点で持っているイメージを洗い出して可視化するわけです。

当たり前ではありますが、同じ単語がフレーズを聞いても、そこからイメージする内容と言うものは人それぞれです。例えば昨今では様々な企業がコーポレートアイデンティティの確立のため様々なメッセージを発信しています。これらはTV CMなどで耳にすることもあるので、なんとなく聞いたことがあると言う方も多いのではないかと思います。

例えば、私が思いつくものを幾つか上げると下記のようなものがあるでしょうか。

  • I'm lovin it(マクドナルド)
  • まだ、ここにない、出会い。(リクルート)
  • DRIVE YOUR DREAMS.(トヨタ)
  • ハイパフォーマンスの実現へ(アクセンチュア)

これらはどれも素敵なキャッチフレーズだと思うのですが、ここから思い浮かべる事って人によって結構違うんじゃないかなと思うんですよね。そこでこういった言葉から思い浮かべるもの、例えばハイパフォーマンスの実現って言われても、そもそもハイパフォーマンスってなんじゃいってなる可能性もあるわけです。

そこで、チームのメンバーで、テーマに対するイメージを書き出して、それぞれのイメージの違いを認識して置くことによって今後のプロジェクトを円滑にすすめる事が出来るようになります。また、同時に自分たちが現時点で持っているバイアスを意識する事ができます。

また、こういったワークを通して頭のなかを整理しておくことによって、この後に控えるリサーチオブジェクティブであるとかリサーチ計画をスムーズに設定出来るというメリットもありそうです。

ユーザージャーニーマップでピザ屋のサービスを表現する

ピザ屋のサービスをデザインした事について下記の記事で紹介しました。

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上記実習のあとは、自分たちがデザインしたサービスについてユーザージャーニーマップを使用してタッチポイントの分析を行っていきます。なお、ユーザージャーニーマップに関しては、カスタマージャーニーマップだとか、ユーザーエクスペリエンスマップだとか、似たようなものがたくさんありますし、それらをほとんど同じものだとして説明している記事もあるようですが、ここでは詳細に踏み込んで説明することはしません。シーン毎に、どういったユーザーが登場して、彼らがどのように行動するのかを整理したもの、程度に認識して貰えれば良いのではないかと思います。

マップを描く上で気をつける事は、具体的な事例を考えると言うこと。デザインを行う際には、具体的な話と、抽象的な話を行き来することが多々あり、そのどちらもが非常に重要なのですが、抽象的な話でマップを使用してしまうと、そのサービスが結局誰に向けたものなのか、どのような価値を提供するのかという点が曖昧になってしまい、サービスの詳細がイメージしにくくなってしまいます。

ですから「ユーザーがピザ屋の前にきて、カウンターでピザを注文する」のようなどこにでもありそうな事例でマップを作成するのではなく「オフィスワーカーのジョンはランチに何を食べようか考えていたところ、近所にピザ屋がオープンしたことを思い出した。味や値段、何がウリなのか等はよくしらないが、試しにそのお店に行ってみることにした。」のように、具体的に、ユーザの行動がイメージ出来る用に記述する事がポイントです。

そして、さらに重要なのが、作成したマップを他の人に説明しておかしな点が無いかをチェックしてもらうこと。マップを作成した本人はサービスの内容、流れなどが頭の中にあるわけですから、マップ化した内容に抜け漏れがあったとしても頭のなかで自動的に補完する事が出来ますが、他人の場合はそうは行きません。マップだけを見て同等のサービスを再現することが出来るか。また、マップの内容、前提等に矛盾などが無いか等を第三者の目でチェックしてもらう事によって、後々の分析が可能なマップとして仕上げる事が可能になります。

実際、私達の場合も、自分たちでは完璧だと思っていても第三者に説明すると色々とツッコミを受けたりしました。こういった事に限らず、他のことでもそうだと思うのですが自分の仕事のミスに自分で気づくってなかなか難しいですよね。念入りにチェックすればミスを減らす事は出来るかもしれませんが、他人にチェックしてもらえば自分でチェックするより効率よくチェックできたりするわけで、他人を頼ってばかりってわけにも行かないとは思いますが、こういった類のギブアンドテイクを活用することが生産性向上に繋がるのかなぁ等と思ったりも。

ピザ屋で学ぶサービスデザイン

本日からサービスデザインのプロジェクトが始まっています。今回の授業では本格的なプロジェクトに入る前に簡単なワークショップを行ってサービスデザインとは何かについて学び考える時間がありました。

まず、教授からほとんど何の説明も無く「ピザ屋におけるエクスペリエンスをデザインしなさい」という課題が出されます。もう少し内容を詳細にかくと、下記のような感じ。

  • このピザ屋では、ピザを8等分し、各スライスに好みの具材を載せる事が出来る
  • 具材は、マルゲリータ、チーズ、肉など10種類の中から自由に選ぶ事ができる
  • エクスペリエンスをデザインする制限時間は30分間
  • 30分後、顧客役の人に対して下記のような指示書が渡されるので、サービスを提供する事

日本ではそこまでメジャーではありませんが、こちらでは街の至る所にピザ屋があり、我々学生に取って非常に身近な存在となっています。だけど、一般的なピザ屋さんでは、マルゲリータや、ハワイ、クラトロフォルマッジなど、ピザの種類を指定したらピザを構成するすべてのスライスに同じ具材が乗っているわけです。当たり前ですが。

もし、各スライスの具材を自由に指定出来るピザ屋があったらどうだろうか。どのような注文方式を提供するべきでしょうか。というのが今回の課題なわけです。

もちろん店員さんに対してカウンター越しに各スライスの具材を指定する事も出来るでしょうが、単純に考えて注文するために従来の8倍の時間がかかるわけですし、注文ミスも増えるかも知れません。こういった課題をどうやったら解決出来るかを考えなさいという事でもあります。

我々のチームはというと、店頭で口頭で注文するのではなくスマートフォンを使用してピザを注文してから店に向かうとスムーズにピザを受け取れるという方法を提案しましたが、他のチームを見ていると顧客がマグネットを使ってトッピングをタンジブルに指示したり、サブウェイのようにトッピングを指定したりなど様々なアイディアが出ておりましたが基本的には、注文中のピザをいかに見える化して、顧客と店側で誤解をなくすかというところに注力しているチームが多いようで、いかにして短時間で注文できるかという点には、ほとんどのチームがこだわっていないようにも見受けられました。

しかし、デザインを行う側としては、これでうまく動くだろうと思っているにも関わらず、第三者に使ってもらおうとすると様々な発見があって面白い。この新しいピザ屋でどうやって注文すれば良いか、説明無しではなかなか理解してもらえなかったりもするし、我々が想定して居なかったような振る舞いを顧客が取る事も多い。30分で作ったプロトタイプなので、うまく動かないのは当たり前といえば当たり前なのでしょうが。

コペンハーゲン空港でバゲッジロスト(2回目)

成田空港からヘルシンキ空港でのトランジットを経てコペンハーゲン空港へ。飛行機の遅延も無く、予定通りに到着してホッとしながらスマホの電源を入れてみると、こんなSMSが飛び込んできます。

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どうやら、ヘルシンキ空港で荷物の積み込みが間に合わなかったから、次の便に載せてコペンハーゲン空港に送るよ、って言う事らしい。

次の便が到着するのは約1時間半後。出来る事なら待ちたく無いけれど、この程度なら仕方ないと思いつつ、おとなしく待つことにします。しかし、次の便が到着して、預け入れ荷物が回転台に流れ始めても私の荷物は一向に出てくる手配が無い。

どうしたものかと思いつつ、係の人に確認して見ます。実はコペンハーゲン空港で手荷物が出てこなかったのは今回が初めてでは無いので慣れたものです。こんなことに慣れたくは無いのだけれど。

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とりあえず前回同様、荷物が出てきたら送ってくれるという事なので、私の滞在先や連絡先などを記載して空港をあとにすることに。さて、いつ出てくるだろうか…。

しかし、前回はバゲージロストのカウンターにはほとんど人がいなかったのに、今回はたくさんの人が順番待ちをしていました。私も係員さんと話をするためだけに一時間以上待つ羽目になった。日曜日で取り扱い荷物が多いとかあるのかも知れないが、大変だなぁ。

デザインスクール交流会に

Party's Over

日本に帰国中、デザインスクール交流会という素敵なイベントがあったので参加してきました。主催が下記ブログの著者でもありCIIDの先輩だという事で、私もお誘い頂いた感じです。

interactiondesign.jp

このイベントはデザインスクールにゆかりのある人達で集まってなんやかんや親睦を深めましょうという趣旨だと私は理解していますが、海外のデザインスクール、例えばロンドンのRCAやアメリカはIITやMITの卒業生や在学生など、合計20人程度が参加しており、他大学の話などをお伺いする事もでき、大変有意義な場でありました。

それぞれの大学で特色などありますので、どこが良い、どこが悪いというのがあるわけでは無いのですが、他校と比較する事で、我らがCIIDの強みなどをより客観的に見る事も出来て、良い機会でした。