デザインダイアローグコペンハーゲン

デンマークのコペンハーゲンでのデザイン留学を通して考えたこと

世界は思い込みで出来ている

CIIDの大きな特徴ひとつに、それぞれの授業で世界中から選りすぐりの教授陣を招聘していると言う点があげられます。実は、普段からCIIDの建物に居て教育部門に携わって居るのは、CIIDの共同創設者のAlieさんのみ。他にもITだとか、ファシリティだとか、事務的な事だとか、様々な面でお世話になる方がいらっしゃいますが、それらを含めても5名ぐらいじゃないかな?と思います。

そうして世界中から招聘された教授陣が1週間、場合によっては2週間とかコペンハーゲンに滞在して、学生達に対して指導を行うシステムになっています。例えば、先週はDavid Sherwin氏とその奥様のMaryさんの講義でした。

David氏は世界的に有名なデザイン会社Frogのフェローで、LinkedInのUX Designerでもあられます。デザインに関する本も多く執筆されており、この業界では有名人のようです。彼の講義の中で印象に残っていることのひとつが、思い込みに関する事でした。

例えば、何らかの新しいビジネスのアイディアがあったとします。こういった場合にこのアイディアの発案者は、様々な思い込みを抱えています。これから事業を起こそうとするぐらいですから、その事業に対して「これはうまくいくはずだ」と信じて居るんじゃないでしょうか。簡単に言ってしまえばこれが思い込みです。起業に関する思い込みとしては例えば下記のような物がありますが、他にもいくら事があげられるでしょう。

  • 俺が使いたいんだから、他の人も使いたいはずだ
  • 俺と同じ問題をみんな持っているはずだ
  • この問題を解決するために一番よい方法はこれだ
  • このソリューションには、モバイルのアプリが必要だ

こうした思い込みは良くないけど、決して悪いことでもない。重要なのは、自分自身がどういった思い込みを持っているかを知り、それにどうやって対処するか?と言うことです。

思い込みを見つけたらその思い込みが事実か否かを評価する必要があります。例えば下記のような質問を繰り返す事で、思い込みを検証出来るかもしれません。

  • どのような問題を解決しようとしているのか?
  • それは本当に問題なのか?
  • それをどうやって確かめる事が出来るか? 

しかしながら、プロジェクトにおいて、思い込みを完全に排除する事は不可能です。検証できない思い込みは、リスクと成り得ます。だけど時間やコストなどのリソースの問題もありますし、実際に検証出来る事って実はそんなに多く無いのも事実です。そもそも思い込みではあるが、プロジェクトにあまり影響を与えない思い込みも少なくありません。

しかし思い込みを排除しなくても良いのかと言うとそういうわけではありません。プロジェクトを進める上で無駄なリスクを自ら取りに行く必要は全く無いと言うことであって、思い込みをうまく活用することが良いデザインをする上で重要な点です。大げさに言ってしまえば、思い込みこそがクリエイティビティの源泉で、世界を形作る素なのかもしれません。