デザインダイアローグコペンハーゲン

デンマークのコペンハーゲンでのデザイン留学を通して考えたこと

アイディアを選んだ理由をどう説明するか

何らかのアイデアを考える時、多くの場合たくさんのアイデアから1つ選ぶことになると思うが、多くの可能性の中から、何故それを選んだのか?に答えるのは意外と難しい。

アイディアを自分で考えてそのアイデアを自分で実行するのであれば、そのアイディアを選んだ理由を誰にも説明する必要がないから、自分の直感を信じて気に入ったアイディアを選ぶだけで良い。しかしながら、会社なので業務としてアイディアを出し提案する場合、自分が気に入ったから、というだけでアイディアを選ぶことができる場合って実はあんまりないんじゃないかなとも思う。

通常はそのアイデアがなぜ良いのか、他のアイディアと比べてどの程度よいのか、他にもっと良いアイディアは無いんだと言うことを示す必要があると思う。しかしながら、これは普通に考えてとても難しいことだと思う。なぜなら、世の中には無限の可能性があるわけです。

例えば選択肢が限られている場合、赤色、黄色、青色、この中から1番いいを示しなさいとかであればそれぞれ比較検討することができるはずです。今回の目的はこうこうこうであるから、その目的に照らしあわせて一番良い色は赤色です。とか。

エンジニアリング的な話ではあるけれど、特定の機能を実現するシステムを開発する場合であっても、色々な制約のうえで検討すると、取れる方法っていうのはわりと限られてくる場合が多く、それぞれのアイディアがどういいかっていうのを比較検討するのはそこまで難しいことではない。いくつかの設計方針などを出して、今回はこのアイディアが良いですと言う話をすることが多くの場合、可能です。

だけど例えば、これから新規事業を起こすにあたって一番よいアイディアを示しなさいと言われた時に、何らかのアイディアを示す事はもちろん出来るけれど、それが一番良いです、とどうして言えるんだろうか。もちろん、それっぽい理由を付ける事はいくらでも出来るわけです。5Forcesだとか、SWOTなどで環境分析を行った結果だとか、そこまでビジネスライクでなくたって、世の中としてこれこれこう言うトレンドがあって、我々にはこう言う課題があって、こう言う状況だから、このアイディアを提案します、とか。でも、他にもっと良いアイディアが無いってどうして言えるの?アイディアを100個だとか1000個出して、その中から選びましたって言っても、もっと良いアイディアがそのリストに入ってなかったら、そんなのは意味が無い。

建築などでも同じような話はあるだろうか。たとえばスポーツ等に使用できるスタジアムを作るにあたって、一番良いアイディアを示してくださいと言われても、デザイナーによって、もしくは見る人によって一番良いと思うアイディアが異なるし、どれが一番良いだなんて断言するのはとても難しいんじゃないだろうか。もっともだからこそコンペが成立するわけですが。

私が今いる世界、デザインの現場でもそういった問題は当然のように存在するのではないかと思う。そしてどうやって選んでいるかというと結局デザイナーの好みであったり興味関心であったり、そういったところでバイアスがかかってくるのではないかと思う。結局、CIIDにおけるプロジェクトにおいても、もちろん最初に課題があるわけだけど、その課題に関して自分たちがどこに、どういったことに興味があるか?からプロジェクトを始めて、リサーチ活動を行い、アイディアを作り、コンセプトの提案を行う。

最初は、もっと良い方法があるのではないか?本当にこれで良いのか?ってわりと不安になったりもしていたのだけれども、最近はこれでいいんじゃないの?って思うようになってきた。だってそもそも「一番いい」ばっかりにこだわっているといつまでたってもプロジェクトが進まないし、そもそもプロジェクトの内容が同じようなものばっかりになってくるのでは、とも思う。大企業ならそれぞれ自社の強み、弱みだとかあって当然だと思うけれど、スタートアップの場合、強み弱みなんてそこまで無い。創業者(グループ)のキャラクターだとか、強み弱みってのはもちろんあるだろけど、世の中全体でみて、この人じゃなきゃ出来ないって言うほど強烈な特徴を持っている人がそんなに居るとも思えないし。

では、そのアイデイアを選んだ理由を上司に聞かれた時に、どう答えるか?今の段階で、私の中で明確な答えを持ちあわせて居るわけではないのだけれども、興味関心による勝手な仮説を積み重ねて、取りうる選択肢を狭め、そこに合う答えを用意すること。

例えば、新規事業のアイディアを出せと言われた時であれば「今はビッグデータが流行っていますので、これに関連する分野で考えてみました」「今後のトレンドはVRですので、この領域における新規事業は」とか前置きをすること。もちろん、その時点で「そんなのダメだよ。ビッグデータなんて周回遅れだよ」とか突っ込まれる可能性もあるので、新規事業のアイディアを出せと言われた時点で、興味関心分野について合意を得ておいたほうが良いのかもしれないけれど。