デザインダイアローグコペンハーゲン

デンマークのコペンハーゲンでのデザイン留学を通して考えたこと

インタビューからインサイトを抽出し問題解決の方向性を設定する

今週はピープルセンタードリサーチ(people-centered design)の授業を受けています。これまでの授業の内容は下記の記事でも書いていますが、今回は、インタビュー結果から、問題解決の方向性を設定する方法について書いていきます。

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インタビューが終わった後は、インタビューの内容をまとめる作業に入ります。インタビュー内容のまとめ方と言うのはおそらく色々あると思うのですが、今回の授業では、インタビューごとにリッチプロフィール(Rich Profile)を作成し、インタビューの内容を可視化する事が求められました。

リッチプロフィールの作成

リッチプロフィールとは、その人の写真、経歴、リサーチ対象との関係など、インタビューの中で出てきた興味深いエピソード、リサーチ対象への興味関心姿勢思いなど、印象的な発言などから構成されるものです。本記事の冒頭にある写真を見ていだければイメージがつかめるかと思います。

余談になりますが今回CIID流のデザインプロセスに取り組んで感じた事のひとつに、各ステップのアウトプットを可視化する、と言うことがあるのかなと思いました。複数のステップを一気にやってしまう事も出来るのでしょうが、手戻りしにくかったり、チーム内でどこまで合意形成ができているかが不明瞭になったりするので、特に慣れてないうちは、細かくステップを刻んでプロジェクトの進捗を可視化するということが非常に大事なんだなと感じています。

インサイトの抽出

さて、リッチプロフィールの作成後は、インタビューで見たこと、聞いたこと、感じた事、気がついたことなどをポスト・イットにどんどん書き出していき、そこからインサイトに抽出を行っていきます。インサイトと言うのは、日本語にすれば気づき、でしょうか。

例えば、異なる2人にインタビューを行い、スポーツ施設へに行き方についてのコメントで、次のようなフレーズが出てきたとします。

僕はスポーツ施設に行くとき自転車でいくんだけれど、これはサッカーをする前にちょうど良いウォームアップなってるんだ 

私は、友達と待ち合わせをして、コーヒーを買ってからバスに乗ってスポーツ施設に向かいます。

ここから、どんなインサイトを導き出す事が出来るでしょうか。授業の中では、良い例と悪い例が紹介されていました。まずは良い例。

人々は、スポーツ施設に行く退屈な道のりをポジティブなものにする方法を探しています。

 悪い例だと、このような感じになります。

人々はスポーツ施設に行く前に運動したり、友達とコミュニケーションをする方法を探しています。

これらの違いとして、良い例のほうがより具体的で、踏み込んだ内容になっているのがわかるかと思います。授業の中で言われたのは「Why?を繰り返せ」と言うこと。運動したり、コミュニケーションしたいと思っているのは何故か?つまり普通に行くだけでは退屈だからなんじゃないか?と考える事が出来ます。

オポチュニティの設定

インサイトの抽出後はオポチュニティの設定を行います。オポチュニティとは、How Might We Question(以下、HMWQと書きます)とも呼ばれるもので、ゴールと制約を定義し、問題解決の方向性を決定します。例えば、「我々はどうすれば、GPSを活用したスマートフォンアプリを用いて、顧客を満足させることが出来るだろうか」等のようなものです。上記の例だと、「GPSを活用したスマートフォンアプリを用いて」の部分が制約で、「顧客を満足させること」がゴールです。

ただし上記は、悪い例のHMWQになります。HMWQで重要なのは、曖昧でも、具体的過ぎても行けないと言うこと。顧客を満足させると言うのはとても曖昧なゴール設定であり、もう少し具体的にゴールを設定する必要が有るはずです。また、GPSを活用したスマートフォンアプリを用いるというのは、少し具体的過ぎるはずです。何か特別な事情があるのなら仕方のない事かもしれませんが、あまりにも強すぎる制約は、解決策の幅を狭めてしまう事になりますので、「位置情報を活用して」ぐらいでも良いのかも知れません。

では、HMWQをどのようにして作れば良いのでしょうか。まず、ゴール部分と制約部分に分けて考える必要があります。ゴールに関しては、ここまでに抽出したインサイトから導き出す事になります。例えば、上で例に出した「人々は、スポーツ施設に行く退屈な道のりをポジティブなものにする方法を探しています。」から導き出すならば「スポーツ施設に行く道のりを楽しくする」がゴールになり得るでしょうか。そして制約に関してはリサーチの内容からではなく、デザインチームの趣味嗜好興味関心から決定するものだそうです。どういう制約が必要か、どういう制約を付けたいかをチームで話合って決める必要がありますが、例えば「時間と場所を活用すること」等が候補に入るでしょうか。

このようにして、インタビューの内容から問題設定を行うことができましたので、この後いよいよ問題解決のためのに取り組んで行くことになります。