デザインダイアローグコペンハーゲン

デンマークのコペンハーゲンでのデザイン留学を通して考えたこと

ゴミ箱に取り付けられたリサイクル用の棚

デンマークではペットボトルや缶等の飲料を購入する際にPANTと呼ばれるデポジットが必要になります。これに関しては下記の記事にも書いたので是非見てみてほしいのですが、これに関してもうひとつ発見があったのでご紹介します。

ddcph.hatenablog.com

デンマークに限らずヨーロッパを歩いていて思うのは、街中にゴミ箱がとても多いんですよね。ヘタすれば数十メートルおきに上記のようなゴミ箱が置いてあって、ゴミがあれば気軽に捨てる事が出来ます。日本ですと、ゴミは家に持って帰る事がマナーとされており、街中でゴミ箱を見かける事はほとんどありませんよね。

さて、冒頭の写真はデンマークの街中に置かれたごくごく一般的なゴミ箱なのですがあることに気が付きます。それはゴミ箱の横にPANT容器、つまり空き缶やペットボトル用の小さな棚のようなものが取り付けられて居る事です。なんでこんなものが?と思われるかもしれませんが、私はこの簡単な仕組みが非常に面白いなと思いました。

デンマークのPANTというのは結構高額でして、素材や容量にもよるのですが、ペットボトル一本で45円程度のデポジットがかかる事もあります。1本あたり45円って結構高額なんですが、そもそもゴミを家に持ち帰る習慣が無いデンマーク人、外で飲んだ飲み物の容器を家に持ち帰るような事はせず、当然捨てて帰ろうとするわけです。

でも考えて見てください。みんながみんなPANT容器をゴミ箱に捨てたらどうなるか。まず、リサイクル率は下がります。そしてホームレスの人たちはPANT容器を回収すればお金になると言うことを知っているわけですからゴミ箱を漁り、周囲にゴミを撒き散らかします。

そこで、一部の人達が暗黙的に始めたのが、PANT容器をゴミ箱には入れず、ゴミ箱の横の地面にわかるように置いておく、ということ。友人の何人かに聞いてみたところ、これは特にコペンハーゲンのような都市部で明文化はされていないものの、わりと多くの人が知っている暗黙的なマナーとなっているようなんですよね。

こうしておくことでホームレスの人たちがゴミ箱を漁らずにすむ。ゴミ箱を漁らないので、ゴミ箱の周囲にゴミ場巻き散らかされる事もありませんから、ある意味で一石二鳥のやり方でもありますし、見方を変えれば住民とホームレスの間である種のコミュニケーションが成立しているとも考える事が出来ます。

だけど、これはあくまでも一部の住民がやっていたことであって、全住民がやっていた事ではないんですよね。この習慣をもっと多くの人に根付かせるにはどうすればよいか。おそらくこの問題に対してコペンハーゲン市が出した答えが、既存のゴミ箱にPANT容器のための棚を取り付けると言うことなのかなと思います。

ちなみにこの棚は昨年の夏頃から市内500個のゴミ箱に取り付けられ始めたようで費用は約2000万円かかっているそうですが、効果は上々でゴミ箱に捨てられるPANT容器が半分以下になったとのこと。リサイクル率が上がり、ホームレスの方々の収入にもなり、街も綺麗になる。簡単な仕組みですがとても興味深いプロジェクトだなと感じました。