デザインダイアローグコペンハーゲン

デンマークのコペンハーゲンでのデザイン留学を通して考えたこと

スクラップの中から可能性を探すエクスペリメント

CIIDのカルチャーと言って良いのかわからないのですが、CIIDでよく行われていることのひとつにエクスペリメントと呼ばれるものがあります。エクスペリメントとは日本語にすれば実験でしょうか。デザインとしてうまくいくかどうか、それに価値があるか無いか、それにどういった意味があるかを深く考える前に、とにかく動くものを作って、それがどんな感じか確かめてみよう、と言うものです。

そうして作られたものと言うのは大抵、プロダクトやサービスには成り得ないものが殆どなのです。だけどそれが無駄であるかというと、そういうわけでは無く、そこから新しい発想を得られたりだとか、ブラッシュアップしてさらなる実験を行う機会を得ることが出来るわけです。

例えば、下記の写真は包丁とまな板に電極をつけてコンピュータに接続し、野菜などをカットした時に音がなるデバイスです。

だから何?と言ってしまえばそれまでなのですが、例えばキュウリを切った時に叫び声が聞こえて来たらユーザはどういう印象を受けるかであるとか、包丁とまな板をドラムマシンに変えられないだろうかなど様々な試行錯誤を通して、どうやったら料理が楽しくなるかなど、ユーザにとって魅力的な価値提供のアプローチの可能性を探っていくわけです。

教授が言う所によれば、このように多くのエクスペリメントを行う事で多くの知見を得られるし、新しい可能性を見出す事が出来るというのですね。議論ばっかりしていても仕方ないから、ちょっと馬鹿げたようにも思えたとしても、クオリティが低くても構わない、とにかく手を動かしてTons of Scrapを作るんだ、と。

チームプロジェクトにおける経験の重要性については下記の記事でも書いたのですが、このようにチームでエクスペリメントを行い同じ経験をするというのは、実は我々が想像する以上に大きな価値を持つのではないかと思うのです。

ddcph.hatenablog.com

議論というのは確かに重要ですし、思いつくものを片っ端から作っていたらコスト的に見合わないという事実はあるものの、言葉だけでコンセプトをチームで共有し伝えるというのはネイティブ同士であっても難しい事なのではないかと思いますし、議論ばっかりしていても何の進捗も得られません。そうであれば、それはそういうものだと割りきってしまって、ある程度合意形成を得られるのであれば、ラフでダーティなエクスペリメントをガンガンやっていったほうが、結果としてプロジェクトを前にすすめる事になるのではないか、と。これは、ある意味でタイムボクシングの考え方とも関連があるかも知れませんが。

せっかくですので他に、どのようなエクスペリメントがあったかを写真で簡単に紹介したいと思います。下記はレコードマシンに電極をつけてレコードを再生したらどうなるかを試したものです。

下記は、自転車のサドルでスマホ等をコントロールできないかというもの。

下記は、手すりをハックして階段の登り降りを楽しく出来ないかというもの。

この他にもたくさんの、Tons of Scrapが毎日生まれては消えています。デザインテーマを探索するに当たって、ユーザリサーチを通して課題を探しだすというアプローチもありますが、このようにしてデザインテーマを探しだす方法もあるよという話でした。

ちなみに、こういう方法が向いているシーンとしては、何らかの特定の技術だとか環境を活用する方法を探したい場合というのがひとつあるのかなと思っています。

例えば企業であれば、自社で開発したアルゴリズムを活用した製品、サービスを企画したい場合なのでしょうか。そのアルゴリズムが使えそうな製品をとにかく色々プロトタイピングしてしまって、それが面白いか、有用か、価値があるかは後で判断すれば良い、という感じかなと思います。