デザインダイアローグコペンハーゲン

デンマークのコペンハーゲンでのデザイン留学を通して考えたこと

技術力がアイディアに制約を付ける

下記の記事で書いた通り、今週はMaterials of Electronicsと言うことで電気回路に関する授業を受けています。

ddcph.hatenablog.com

一通り電気回路に説明を経た後、じゃぁ学んだ事を使って何か作って見ましょうとなるわけですね。私のチームは3人で、一人はブラジル出身の女の子でバックグラウンドは写真や動画編集だそうで、当然の事ながら電気回路に触れた経験は一度も無い。もう一人はトルコ出身の女の子でシステムエンジニアリングとのこと。エンジニアリングというからには、電気回路のことも一通り知っているのかなと思ったらこちらもやはり全く知らないという。

チームを組んだ後はとりあえず軽くどんなことに興味があるかなどを共有しつつ、アイディア出しをするわけですが、これが中々難しい。だって授業の中でやったのは、LEDの光らせ方と、スイッチの仕組みぐらいなんですもの。それらの知識だけでは当然ながら出てくるアイディアにも限りがあります。例えば、握手したら光る手袋だとか、撫でると目が光るぬいぐるみだとか、座るとテールランプが自動的に点灯する自転車だとか、便座に座ると外にある表示が変わるトイレだとか。確かにこれらのアイディアの中には面白いものもあると思います。だけど私からすると、そんなの5分もあれば作れてしまうし、それ面白いの?って思ってしまうわけで。

その一方で、私のほうから提案したものというのは、電導性の糸の長さによって抵抗値が変わる事を利用したギターだとか、電導性ファブリックの特性を利用したフィットネスマシーンだとか、IoTっぽい自転車だとか、まぁちょっと言ってみれば少し複雑なプロジェクトになりがちなわけです。

おそらく、彼女達からこういうアイディアは出てこない。なぜならLEDを点灯させるだけでいっぱいいっぱいだから。それはおそらく電気回路を使ってどんなことが出来るかについて理解が不十分だからだという事もあるだろうと思う。結局、技術力がアイディアに制約を付けるというのは十分にある話だけれども、それは実は私自身にも言える事であって、結局のところ、自分自身が技術を理解している範囲の中で、こういうものなら作れるだろうという考えがあることを否定出来ない。

それらの枠を外して発想出来るようになれれば良いのだろうけど、それはそれでなかなか難しいよなぁとも思う。だって例えば、どこでもドアがあるといいよね!なんてのは誰でも思うけれど、それを現時点の技術で実現出来るかと言うと不可能であって、技術を知らないとその判断が出来ない。

結局のところ、世の中にある技術を広くしり、それらを使ってどういうことが出来るかを勉強するしか無いのだろうけれど、技術を表面的に知るだけではわからない事も結構ある。例えばAmazon Web Serviceなんてもの、表面的理解だけであればクラウドでWebサイトを公開するためのサービス群だよねぐらいのものだろうけれど、実際に触って見ると、これってこういう使い方も出来るよねとか、そういう発想がいろいろ湧いてくるのです。電気回路も同じで、私の場合それなりに手を動かしている経験があるからこそ、抵抗をこういう風に使ったらこういうインタラクションが生まれて面白いんじゃないか等と考える事が出来るのだけれど、表面的な理解ではこういったアイディアは生まれてこないだろうなとも思う。

技術を無視したアイディアと、実現可能なポイントのバランスをうまく取ることが出来れば良いのだろうけどそれをうまくやる方法はあるのだろうか。