デザインダイアローグコペンハーゲン

デンマークのコペンハーゲンでのデザイン留学を通して考えたこと

課題抽出からアイディア創出の流れ

 

先週はインタラクションデザインの講義だったのですが、以前にも述べた通り、CIIDはLearning by Doingをモットーにしており、講義だけで終わる事は無いのです。

Transportationプロジェクト

今回のテーマは以前、下記の記事でも書いたように「Transportation」に関して何か新しい提案をしなさいというもの。

ddcph.hatenablog.com

先々週は、ストーリーテリングの授業でパートナーをスーパーヒーローとして紹介するムービーを作るという課題があったものの、それはあくまでも自分たちのためのプロジェクト。世の中に対して何か役立つ(かもしれない)提案をすると言う課題は今回が初めてであり、どのチームもやる気がメーターを振りきって居るのが伝わってきます。

ddcph.hatenablog.com

私達のチームは、3名で取り組んで居ましたが、実は必ずしも3名でないと行けないという事はなくて、例えば他のチームは2名でやっているところもありましたし、4名という大所帯で取り組んで居るチームもありました。

この人数ってのは以外と難しくて、人数が多いと意見がまとまらなくなるリスクが有る一方で、方向性さえ決まればリソースには余裕があるので提案の内容だったりプロトタイプだったりをしっかり作りこむ事が出来ます。一方で、2名のチームの場合、意見はまとまりやすいのでしょうがリソース不足は否めないところがあります。3名だと、そこそこ意見はまとまりにくいけど、そこそこリソースもあるって感じですかね。なかなか難しいです。

アイディア創出の流れ

プロジェクトへの取り組み方針はひとつでは無いと思うんだけれど、今回は我々のプロジェクトにおけるアイディア創出の流れを順を追って紹介しようと思います。

  1. それぞれが気がついた点をポストイットに書き出しシェアする
  2. ポストイットを整理し課題を抽出する
  3. 課題に沿ったストーリーを作成する
  4. How might weステートメントを作成する
  5. パラメータを抽出
  6. 各パラメータに対して解決策を出す
  7. アイディアシートにまとめ評価する
  8. プロトタイピング

この中で特に。3以降が新鮮で面白いと思ったので紹介します。

課題に沿ったストーリーを作成する

課題がどのような場面で問題になるかを実際に文章にしてみます。例えば「電車が満員」という課題の例で考えて見ますと、その課題によって困って居るのは誰なのか、どういうシチュエーションでその人は課題に出会うのか、その時その人はどんなことを思うのかと言った事を詳細な文章にしてみます。

例えば「商社で働く営業の30歳男性タロウは毎日中央線の満員電車に30分揺られて会社まで通勤している。彼は体を押し込む様にして毎日電車に乗り込み、時には体が中に浮いてしまい大変苦しい思いをすることもある。また、痴漢と間違われない様に神経を使う事も重要であり…」のような感じでしょうか。

ストーリーに対するHow might weステートメントを作成する

ストーリーの中から、問題となって居る点を抽出してHow might weステートメントを作成します。How migt weとはつまり、どうすれば課題を解決出来るか?という事ですね。上記の例で言えば「我々はどうすればタロウの通勤を快適なものに変えられるか?」という感じでしょうか。そしてそれと同時に、タロウの通勤を大変なものにしている原因を文章化してみます。

例えば、「日本の通勤電車は大変な混雑で、ひとつの車両に多くの人が乗っている。そこでは見知らぬ人との接触は当たり前で、大変不快なものである。さらに痴漢被害及び冤罪が社会問題となっており…」のような感じでしょうか。ちなみに実際に作ったのが下記の写真です。

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パラメータを抽出する

そして更にここから、問題のパラメータを抽出して見ます。通常、ひとつの問題に対する課題ってのは色々あって、上記の例であれば「ひとつの車両に多くの人が乗っている事」が問題だとも言えるし「周りが見知らぬ人だらけ」だという事も問題だといえるかもしれないし「接触」が問題なのかもしれませんし、すべてが問題とも言えるでしょう。つまり、どういう状況になれば解決と言えるのかを考える必要があるわけで、問題は様々なアスペクトから見る必要があるという事です。

各パラメータに対して解決策を出す

抽出したパラメータに対してアイディアを出して行きます。我々が試しにやってみたものは下記のような方法。

  1. アイディア出しをするパラメータを選ぶ
  2. 2分間でポストイットに書けるだけアイディアを書く
  3. それぞれ紹介する
  4. 再度、2分間で、ポストイットにアイディアを書く(ここでは他人にアイディアを参考にしてブラッシュアップしてもOK)
  5. それぞれのアイディアを紹介する
  6. 1に戻る

もちろん、これが絶対ということはなくて色々なアイディア出しの方法があるとは思うのですが、やってみて思った事は、ダラダラとアイディア出しをやるよりも、このように短い時間に区切ってやったほうが面白いアイディアが出るのでは?と言う気がしています。

こうして出てきたアイディアがこちら。なんじゃこれ、みたいなものも結構ありますが、これはこれで良いんです。

良さそうなアイディアについてアイディアシートを作成し評価する

こうして出てきたアイディアに対してアイディアシートを作って行きます。アイディアを評価するときには、Criteriaを用います。そのアイディアが大衆向けなのか、ニッチ狙いなのか、新しいか既にあるものの焼き直しなのか、どれぐらいインパクトがあるのかなどなど。こういった軸を用意することで、議論が空中戦にならずにすみますし、今何について考えているのか、考えなければならないのかを明確にする事が出来ます。

プロトタイピングは何をすべきか

このようにしてアイディアを創出するわけですが、我々のプロジェクトはアイディアを出して終わりではありません。プロトタイピングを行いプレゼンテーションしなければならないのです。

ここで講師の先生からプロトタイピングについて大変興味深い図を教えて頂きました。つまり、車のプロトタイプを作るのであれば、車の価値(つまり移動が便利になる)という点を体験出来るものを作るべきであって、いくら素晴らしい製品になる可能性があったとしてもタイヤだけでは顧客は喜ばないという事。

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Crisp's Blog » Making sense of MVP (Minimum Viable Product) – and why I prefer Earliest Testable/Usable/Lovable

実際、プロトタイピングを行う際には、どんなものを作るか、ビデオなのか、実際に動くモノを作るのかなど色々考えるのですが、何のために、どういったものを作ると良いかという点は忘れては行けないなぁと思った次第です。