先週はインタラションデザインの講義を受けていました。講師はMatt氏とBlair氏。お二人はカナダのトロントにあるNormativeから来て下さっており、Matt氏はパートナーおよびデザインディレクターを、Blair氏はアソシエイトデザインディレクターとのこと。日本企業の役職に換算すると、デザイン部門の部長と副部長、と言った感じでしょうか。なお、Matt氏はInteraction Design Association (IxDA)の副会長でもあられ、インタラクションデザインを教わるには、まさにぴったりな講師に違いありません。
インタラクションデザインとは
講義ではインタラクションデザインの歴史的なところからはじまり、下記の図を使ってインタラクションデザインの要素などについての説明などがありました。
例えば下記の図では、インタラクションに関わる3つの要素を表しています。右側がデザイン対象、左がユーザですね。ユーザはデザインの対象から、どういった刺激(音や、見た目などなど)を取得し、それらをもとに何を知り、考え、どういった行動を取るかを示して居ます。これらの流れをデザインするのがインタラクションデザインである、と。
CCRMA Physic Interaction Design Summer Workshop 2005
Interaction Design Framework
また、私は初めて見たのですが、下記のようなInteraction Design Frameworkと言うものの紹介もありました。新しいインタラクションを考えるときに、こういった要素に整理するとわかりやすいと言う事なのでしょう。実際、講義の後でプロジェクトを行う際にも、こういった図を作成しつつ、議論を行って居ました。
Interaction Design Framework - CCRMA Wiki
メタファの重要性
この中で、講師の方から、何度も言われたのが、このアイディアのメタファーは何だ?と言うこと。完全に新しいデザインというものは中々理解されにくいものであるのは事実でしょう。そこで、メタファーという概念を使用して、アイディアを説明するのは非常に明快で良いなと思いました。
例えば、下記の図が、上記のシートを使って説明を試みた新しいインタラクションの例なのですが、人と人との通信を握手するというメタファーを使うことによって説明しています。
Interaction Design Framework - CCRMA Wiki
ここで幾つかの作品の紹介がありました。ひとつはこれ。階段の各ステップを踏むと音が鳴る様になっています。それだけだとただの音が鳴る階段なのですが、ピアノのメタファを利用する事によって、これが何であるかをユーザが理解しやすくしています。
こちらも楽器のメタファをうまく取り入れた例。みんな知っているものだから、難しい説明をしなくてもスムーズにインタラクションが発生するんですね。
リーンキャンバス、ビジネスモデルキャンバスとの違い
さて授業では触れられて居ませんが、ビジネス界隈ですと最近は、リーンキャンバスであるとか、ビジネスモデルキャンバスとかがよく使われている様に思います。リーンキャンバスはリーンスタートアップという本の中で紹介されており、一躍有名になりました。
- 作者: エリック・リース,伊藤穣一(MITメディアラボ所長),井口耕二
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2012/04/12
- メディア: 単行本
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一方、ビジネスモデルキャンバスはビジネスモデル・ジェネレーションで紹介されて居ます。
- 作者: アレックス・オスターワルダー,イヴ・ピニュール,小山龍介
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2012/02/10
- メディア: 大型本
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どちらもキャンバスの形はとても似ているんだけどこれらの違いとしては、既存事業の分析に使われるのがビジネスモデルキャンバス、スタートアップの立ち上げ時、不確定要素が多い時に使用することが多いのがリーンキャンバスと言う認識です。
これらのキャンバスはビジネス用途なので当たり前と言えばあたりまえなのですが、収益コスト構造がどうなっているだとか、自社の武器は何だとか、そういうところにもしっかり検証出来るようになっています。
ユーザーにフォーカスする
一方で、インタラクションデザインフレームワークにはそういった要素が無く、ユーザに取って価値があるかどうかにフォーカスを絞って居ます。これはリーンキャンバスで言うところの左上と右上の部分、リーンプロセスで言うところのプロブレムソリューションフィットの部分でしょうか。
スタートアップではこれが一番重要な部分であってここを経ない限りは先に進めません。実際、北欧ではこの部分に力を入れており、スタートアップを支援するときも、技術そのものに価値があるか否かではなく、解決しようとしている課題をユーザが持っているかを検討した後に、事業計画の検討を行う流れになってきていると聞きます。
その一番重要な部分を考えるのがインタラクションデザインでもあり、今回の講義の大切な部分なんだろうなと思います。