今週は講師はIDEO TokyoからMichael Peng氏とAmelia Juhl氏を講師に招いてArt & Science of Storytellingの授業でした。授業の内容としてはIDEOの紹介に始まり、デザインリサーチについての方法だとか、インタビューのやり方、集めた情報の整理の仕方、組み立て方など、多岐に渡り大変面白いものでした。
デザインが問題解決のものだとするのであれば、デザインリサーチとは問題定義を行うための活動だとも言えます。そして正しい問題定義を行うためには正しいデザインリサーチが必要なわけです。
ちょっと前に、下記のブログを書きましたが、世の中というものは思い込みの塊でして、自分が当たり前だと思っている事が全然当たり前では無いという事はザラにあります。
例えば、講義の中でパートナーに「ハミガキの仕方」について10分間インタビューするというパートがありました。ハミガキの仕方だなんて、みんな同じようなもんだと思うじゃないですか。だけど実際にやってみると、タイミング、場所、やり方などなど人それぞれで、日常生活の中の単純な行為ですら、こんなに多くのやり方があるんだと驚かされます。これは逆に考えると、ハミガキの仕方なんてみんな同じ、つまり自分と同じだろうと思い込んでしまうと、課題を見逃してしまう可能性が大いにあるということなのかもしれません。
このように、インタビューを行って、その人の行動、考え方、ライフスタイルなどについて深く追いかけていけば、些細な課題にも気がつく事が出来るでしょうし、問題を正しく定義する事が出来るかもしれません。正しく問題が定義できれば正しい解決方法を提示出来る可能性も高くなるわけです。
しかし、です。ハミガキの仕方ひとつ探るのに10分かけるていたら、朝ごはんの様子を把握するのには1時間かかるかもしれないし、お風呂の入り方には2時間かかるかもしれない。一人のユーザの行動を把握するのにこれだけかかっていたとしたら、いつになったら問題定義が終わるのでしょうか。
デンマークに来てから良く耳にする言葉のひとつに、参加型デザインだとか、コデザインと呼ばれる物があります。実際のユーザを巻き込んでデザインを行いましょうという建前なのですが、これ実はデザインリサーチ手法のひとつとして捉える事が出来るのではないかと思っています。
どういうことかというと、例えばハミガキにおける課題を探しているとしましょう。ユーザに聞いてみると、奥歯が磨きにくいとか、歯と歯の間のゴミが取りにくいとか色々な意見が出てくると思うんです。だけれども、その課題には更に課題が隠されて居る可能性がある。
Whyを5回繰り返せだとか日本企業では言うそうですが、まさしく本当の原因を追求しなければ表面的な解決になってしまうし、それは結局ユーザに受け入れられないものとなる可能性があります。ユーザに「こういうソリューションがあれば解決!」というところまで含めて考えてもらう事によって、なるほどユーザが解決して欲しかったのはこういうところ何だなと、精度高く把握する事が出来ることがあります。
とか考えていたら下記の記事が流れてきました。あーあるあると思いつつ、これってデザインリサーチに通ずる物があるような気がするんですよね。
仕事の上で何らかのミスがあったとして、その原因って人によって全然違う場合が結構あるんですよね。上司はもちろん表面的なところ、例えば手続きに不備があったとか、操作を間違えたとか、はわかっているんだろうけど、そこに至る経緯についてはわからない事が多い。そこで結果として部下に問い詰めるような形になってしまうんだろうけれど、実はおそらく違うんだろうな、と。ミスの指摘だけをして終わらせるのではなく、部下に解決策まで一緒に提案させる事によって必要であれば対策を打つことも出来る。もっとも、上記記事ではここまで触れられて居ないのですが。