デザインダイアローグコペンハーゲン

デンマークのコペンハーゲンでのデザイン留学を通して考えたこと

多様性と最大公約数

http://www.flickr.com/photos/95823288@N05/8750313731

photo by Spiva Arts

日本でも、多様性、ダイバーシティの重要性が注目される様になってしばらく経つように思います。多様性と言うのは色々な側面があって、国籍だとか出身地、性別、宗教、バックグラウンドなどその人の属性的な問題もあれば、楽天的だとか、論理的だとか、クソ真面目だとか、その人の性格的な話もあるし、ライフワークスタイルや趣味嗜好など、もっともっと色々な面からの多様性があるはずです。これら多様性を活用して、良い物を生み出していきましょうと言うのが企業など実世界における多様性を活用する目的なのだと思います。

しかしながら、日本の企業、社会だとダイバーシティと言う単語を使用した場合、まずは性別に関する事を指す事が多いように思われます。また、男女間の違いを活用して、創造的な活動をしましょうとか、成果を出しましょうと言うのではなく、男性に取っても、女性に取っても働きやすい職場を作りましょうとか、女性がもっと活躍できるような社会を実現しましょうと言う話になりがちです。もちろん、多様性を活用して成果を出すと言う目的を実現するために、まず、多様な人が働きやすい環境を作ると言うステップがあるのであれば大いに結構だと思うのですが、果たしてそのあとのことまで考えて多様性と言う言葉を使っているのか、少し疑問が残ります。

こういった前置きをしたことには理由があります。以前、デンマークでデザイン関係の研究をしている人と話をしたところ、多様性を求めた結果、成果物がただの最大公約数になってしまう場合があると言う話が出て、大変印象に残って居ます。

例えば世の中にある製品って、多くは右利きの人向けに作られています。これらの製品、当然のことながら右利きの人には使いやすい(仮に100点としましょう)のでしょうけれど、当然の事ながら左利きの人には使いにくい(50点)事が多いわけです。じゃぁ多様性が大事だから、右利きの人にも左利きの人にも使いやすい製品をつくりましょうとなった時に、それぞれの人にインタビューしたり、プロトタイプを作ったりして新しい形の製品を作っても、多くの場合、右利きの人にとっても、左利きの人に取っても80点ぐらいの使いやすさを持った製品が生まれるわけです。本来であれば、異なる属性の人同士が力を合わせて、どちらの人にとっても100点、できれば120点ぐらいの製品を作ることが出来ると良いのですが、中々に難しい事なのかもしれません。

これと同じように、多様性のある人材を集めても、彼らが専門性を100%発揮出来る環境を整えられるかというと難しい問題で、結局はそれぞれが妥協しあうことによって、最大公約数を取ったようなものになってしまう事が多くあっても不思議ではありません。

この理由は上げればキリが無いのかもしれませんが、ひとつはプロジェクト進める上で、チームビルディングが不十分である、と言う可能性があるのかな、と思っています。なぜなら、多様性を活用するためには、相手と自分に違いがあることを認めるのではなく、相手の事を理解してこそだからです。

チームビルディングに関しては色々なアプローチや理論があるのでしょうけれど、我々が参考にしているものを紹介します。日本語の良い資料を見つける事ができなかったので英語のWikipediaを参考に貼っておくのですがチーム形成のプロセスには、Form、Norm、Storm、Performの4段階があるという話。これを経る事によって成果を出せるチームを作る事が出来ると言う理論です。

Tuckman's stages of group development - Wikipedia, the free encyclopedia

ちなみに我々は上記を発展させた物を実線しています。一方通行のフローではなく、Norm、Perform、Stormを繰り返す事によってより高い成果を出せるチームを作ろうというアプローチ。

www.teamresearch.org

ここでようやく昨日のエントリに繋がります。実はこのアプローチって、少人数でないと実行出来ないんですよね。なぜなら、100人もメンバーが居ると、それぞれの名前と顔を覚える事で精一杯。とてもじゃないけどチームと呼べる状態まで持っていけないのではないでしょうか。もちろんこれだけがCIIDの強みでは無いのですが、少人数だからこそ出来るアプローチを取っていて大変面白いなぁと思った次第です。

ddcph.hatenablog.com