デザインダイアローグコペンハーゲン

デンマークのコペンハーゲンでのデザイン留学を通して考えたこと

人はお得感に弱い

Food

デンマークで何か面白いものはあった?というのは日本に戻って来てよく聞かれます。正直なところ、デンマーク見聞きしたものの大半は私に取って新しく、大変面白い物なのですが、その中でもひとつ紹介するとすれば、TooGoodToGoかなと思います。これはデンマークの企業が行っているアプリで、このブログでも過去に何度か紹介しています。

ddcph.hatenablog.com

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このサービスを改めて簡単に紹介すると、レストラン閉店時に残った料理と、消費者をマッチングするアプリです。レストラン側としては残った料理をマネタイズすることが出来るうえに食料廃棄も減らす事ができますし、消費者としては安く料理を手に入れる事が出来るうえに、食料廃棄の削減に貢献する事ができます。

上記のような事情ですから、コペンハーゲンでは多くの人がTooGoodToGoを利用しておりまして、少なくとも我々CIIDの学生の間ではほぼ全員が愛用していると言っても過言ではないほどの必須アプリとなっていました。

ところが、まわりの学生に話を聞いてみても、食料廃棄の削減に貢献するためにアプリを使っているという人はほとんど居ません。もちろん彼らとしても自分の行動が食料廃棄削減につながっているという事は意識しているものの、アプリを使う目的としては安く食べ物を手に入れると言うことなわけで、当たり前だと言ってしまえば当たり前かもしれませんが、これって非常に面白い事だと感じました。

日本でも、お米を残すとお百姓さんに怒られるだとか、アフリカでは子供が飢えに苦しんでるから食べ物を残すなだとか、食事を残す人に対して様々な方法で諭し合いますし、食料を無駄にしてはいけないというのは皆、頭の中ではわかっています。この状況というのは日本に限った事ではなく、デンマークやヨーロッパでも似たような状況なわけですが個々人が食料廃棄削減に対して積極的な行動を取っているかというと決してそうではなく、むしろデンマーク人は日本人以上に躊躇無く食材を廃棄している印象すらあります。

だけれど、食料廃棄削減に貢献することがオトクにつながるようにサービスをデザインする事によって、結果的に多くの人が積極的に食料廃棄削減に貢献しようとするわけで大変うまくデザインされているなぁと感じます。実際、TooGoodToGoのサイトを見ても、安く美味しい料理が手に入る事を全面に打ち出して居るんですよね。

そういえば、この種の社会貢献的な企業で思い出すものにWarby Parkerがあります。

www.warbyparker.com

彼らは彼らのメガネが売れた個数に応じて、売上の中から途上国に寄付を行っているんですよね。これ自体は大変価値のある事ですし彼らのビジネスの仕組みとしても大変うまくデザインされています。しかしながらこれはWarby Pakerでメガネを購入する多くの方が知っている事でありながらも、彼らがここでメガネを購入する理由ってそこには無く、価格が安い事であったり利便性だったりします。

こういった形で社会や環境に貢献する企業は既に色々とあるわけです。だけど今後さらに様々な業態で出てくるでしょうし、こういった形でのブランディング手法、マーケティング手法が重要視されて行くのかもなと思います。