デザインダイアローグコペンハーゲン

デンマークのコペンハーゲンでのデザイン留学を通して考えたこと

コンセプトとその持続可能性について

このブログでも紹介したことがあるのだけれど、かつてコペンハーゲンには廃棄食材を活用したレストランがあった。

ddcph.hatenablog.com

しかしながら、上記のレストランは先週末、2016年8月19日で閉店してしまったようです。このように、大変素晴らしいコンセプトを持ったお店が閉店してしまった事自体は大変残念であるのだけれど、これについて私としても幾つか考えたことがあります。

まず、このお店が、このコンセプトが続かなかったのはなぜなのか。もしこのレストランが黒字でそれなりの利益を出して居るのであれば、複数店舗展開があっても良いと思うし、同様のコンセプトを真似する他の事業者が登場しても不思議ではないと思うのですよね。

そうならなかった、少なくとも競合店が出て来なかったという事は、これがビジネスとしてはあまり旨味がないか、もしくは参入障壁が高いという事であって、これは同時に彼らとしてもプロジェクトの継続が簡単では無かったという事なのかなぁと思われるのです。

理由として想像出来るのは色々ある。例えば下記のような事でしょうか。

  1. 供給側の都合で食材の確保が難しくなってきた
  2. 運営をボランティアスタッフに頼って居たため、彼らの確保が難しくなってきた
  3. 利益があまり出ておらず、将来性に不安があった

1に関しては、彼らはスーパーや近隣のパン屋などから食材の無料提供を受けていると話をしていました。そしてその食材は供給者がレストランまで運んで来てくれているとのことです。これに関して供給側が難色を示しはじめた可能性があるかも知れないな、とふと思いました。

例えば、コペンハーゲンでは廃棄食材を販売するWeFoodというスーパーマーケットがある。WeFoodの場合、ボランティアスタッフが食材提供者の元まで食材を取りに行っているという事である。もしかすると食材供給元がレストランに対しても食材を取りに来てくださいということを要求した可能性はあり、そうなると人出が足らなくなってしまい運営が破綻する、という可能性はなくも無いのだろうかとふと考えました。

2に関して。このレストランでは、シェフに関しては料理学校の生徒などを雇用しているという事であったがフロアスタッフなどはほぼ全員ボランティアであったという事である。彼らボランティアのモチベーションがどのようなものであったかは私にはわからないところではあるが、短期的なプロジェクトであるならいざ知らず、中長期的なプロジェクトで、しかも店舗運営のようにプロジェクトのゴールがいまいち見えにくいものにおいて、ボランティアのモチベーションを高く維持するのは結構大変なのでは無いかと思うのです。

また、ボランティアは学生などが多かったようでもあるので、進学が就職によってメンバーが離れて行ったにも関わらず、新しいメンバーの補充が思うように進まず世代交代に失敗したという可能性もあるかも知れません。

3に関してはビジネス面です。レストランであり食事は有料であったものの、店舗運営に関わる費用を考慮すると赤字であった可能性も否めない。料理の値段をあげれば良いのではと思わなくもないのだが、ちょっとやそこらの値上げでは状況が改善しない程に赤字が出ていた可能性も無くは無いのではと思えるのです。

閉店の理由が上記のうちのいずれなのか、もしくは全く別物なのかは私にはわかりませんが、ひとつ思う事としては、素晴らしいコンセプトを作り、それを単純に具体化するだけでは不十分で、それを持続可能なよう実社会に展開していかなければ、面白いコンセプトだねで終わってしまう恐れがあるという事です。

実際、上記のレストランは、廃棄食材を有効利用するというコンセプトのもと3年間ほど営業していました。そして実際に多くの廃棄食材を救ってきており、大変素晴らしい活動だと思います。しかしながら、彼らがSMEとしてではなく、このコンセプトを世に広げたいと思っていたとしたら、それは失敗だったのかなとも思うのです。廃棄食材を減らすというコンセプトを真に実現したかったのであれば、この活動をいかに広げ、それが持続可能であるように設計しなければならなかったのかなと。

そういった面で私はTooGoodToGoがうまく行っているなと思います。彼らは食糧問題への取り組みをボランティアとしてではなく、おそらくビジネスとして捉え、その取り組みをいかに広げ、改善していくかを考えて居るように思うのです。もちろん彼らが数年後にどのような形になっているかはわからないのだけれど。