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デザインダイアローグコペンハーゲン

デンマークのコペンハーゲンでのデザイン留学の日々について書いています

プロトタイピングとエクスペリメント

アイディア デザイン プロジェクト プロセス

先日、下記のような記事を書いたところ、プロトタイピングとエクスペリメントは何が違うのかというコメントを頂いたので、それについて書いてみようかと思う。

ddcph.hatenablog.com

一言で説明するのであれば、プロトタイピングとは立てた仮説を検証するプロセスのことであって、エクスペリメントとは、仮説の検証ではなく習作に近い物であるように思える。

具体的な例とともにもうちょっと詳しく書くならば、プロトタイピングを行うためにはまず仮説を立てる必要があります。

例えば下記の動画は以前にも紹介したプロジェクトなのです。問題設定としては「ユーザーにエスカレータではなく階段を使わせるにはどうすればよいか」であり「階段をピアノにすればユーザは階段を使うのではないか」というのが仮説ですね。そして、実際にピアノ階段を作ることによって仮説の検証を行っています。

www.youtube.com

では、エクスペリメントとは何かというと、何らかのデザインに使えそうな素材が手に入ったから、何かに使って見ようよという、非常に軽いところがスタートなんです。例えば、LEDとArduinoが手に入ったからLEDを点灯させてみようとか、 Node.jsをインストールしてみたからとりあえずHello Worldを出力してみようとか、Processing用の新しいライブラリが手に入ったからちょっと使ってみようとか。そうすることによって、そのデザイン素材に対する理解を深めたりだとか、新しい発想を得る事を目的としているわけですね。

では、プロトタイピングとエクスペリメントが正反対の概念かというと、そういうわけでも無いから難しい。これら2つはそもそもフェーズが違うのです。

新しいデザインコンセプトを作成する手順としてエクスペリメントを活用する場合、プロセスは下記のような感じになるかと思います。

  1. エクスペリメントを行う
  2. エクスペリメントを通して得た知見からコンセプト(仮説)を設定する
  3. プロトタイピングしてによって創出したコンセプトの妥当性を検証する

実際には、プロトタイピングの前に、リサーチ等が入る場合もあるでしょうが大まかな流れとしてはこんな感じになるのかなと思います。

では、エクスペリメントが役立つ実際のシーンはどんな場合があるかというと、例えば企業の研究所で開発された技術の活用を模索するようなプロジェクトだったりでしょうか。新しいセンサーデバイスを作ったんだけどどうやってビジネス展開すれば良いかとかそういうプロジェクトですね。新しいデバイスは作って見たものの、何に使えば良いのかわからない。自動車業界に売り込めば良いのか、それともサービス業に売り込んで行くのが良いのか、もしくはアパレル業界なのか。そういった場合に、とりあえずセンサーデバイスを使って色々なエクスペリメントを行い、知見を得つつ可能性を模索していくわけですね。

では逆に、エクスペリメントがうまく機能しないプロジェクトは何かと言うと、特定の技術だとかを使う必要が無いけれども、特定の業界に向けた新規製品、サービスをデザインするというようなプロジェクトでしょうか。例えば、銀行窓口向けのソリューションデザインプロジェクトだったり、飲食店のデザインプロジェクト等では、むやみにエクスペリメントを行うよりも、ユーザリサーチから進めていってユーザニーズに関する仮説を構築していくほうが良いのかな、と思うのです。このプロセスを箇条書きにするとこんな感じ。

  1. ユーザリサーチを行う
  2. ユーザリサーチを通して得た知見からコンセプト(仮説)を設定する
  3. プロトタイピングしてによって創出したコンセプトの妥当性を検証する

もちろん、リサーチから始まるプロジェクトではエクスペリメントを行わないかというとそういう事でもないですし、実際にはリサーチとエクスペリメントの間を行き来しながらコンセプトをブラッシュアップしていくのかなと思います。

これらのようにプロジェクトをどのように進めて行くかというのは、プロジェクトによって様々に違うのでこれが正解というのがあるわけでは無いと思うのですが、プロジェクトを多く経験していくうちにその辺りの勘が働くようになって来るのでは、と思ったりもしています。

そもそもデザイン思考に関して言うならば、デザインプロセスというのは武道における型のようなものであるとどこかで読み、非常にしっくりきたのを覚えています。デザイン思考について本等で読んだだけでは身につかず、繰り返し稽古を行う事によって習熟度が高まって行き、そのうち相手がどのような動きを繰り出してきても適切に対応出来るようになってくる、と。

ただ、その稽古をいかにして積むかというのが難しく、いわゆるデザイン思考に関する実務経験豊富な人が中々増えないという現状にも繋がって居るのかなと思います。デザインコンサルティングを専門にしている企業で経験を積むというのはひとつの選択肢なのでしょうが、そもそも日本においてはデザインに対する正しい理解がまだまだ広がっておらず、デザインコンサルティング企業が日本では仕事を取るのに苦労しているという話もチラホラ聞きますので、色々難しいんだなぁと思う次第です。