デザインダイアローグコペンハーゲン

デンマークのコペンハーゲンでのデザイン留学を通して考えたこと

私がデザインに興味を持ったきっかけ3つ

Designs

デザインスクールに来る学生のバックグラウンドが様々だという話は以前しましたが、デザインに興味を持つ理由も様々です。今回は私自身が何故デザインに興味を持ったかという話を書いてみようかと思います。

私は中学校卒業後、奈良高専の情報工学科でコンピュータの勉強をしていました。当時は技術を極めて凄いエンジニアになりたくて、結構必死に勉強していました。

そして、当時から自分で手を動かしてモノを作るのが好きで、色々なモノを作っていました。しかしながら、これだけ色々なモノを作っていながら、デザインというものにはまったく興味が無かったように思います。それが一体、どうしてこの世界に来てしまったのか。今から思い起こすと、きっかけが何回かあったように思います。

かっこいいロゴを作ってくれないか

最初にデザインの事を意識したのは、確か大学院時代、2008年の4月でした。高専時代の友達と起業しようって言う話になったんですよね。で、会社作るからにはかっこいいロゴが欲しいね、という話になるわけです。Webサイトだとか、名刺だとか作りたいし。

当時、神戸にある芸術大学に友人が居ましたので、彼に連絡を取って、こうお願いするするわけです。「かっこいいロゴ作ってくれ!」と。そしたら、こんなこと言われるわけです。

会社のロゴは将来までにわたって影響するアイデンティティになるので、会社のことや、ロゴに対するイメージ、こういうことをしたい!という希望の共有をしたい。

単純にかっこよいビジュアルをつくるだけなら簡単にできるけど、会社のやりたいことをビジュアライズして、文字通りのアイコン(象徴)として表現できれば、ロゴは強みになるよ。

これ、私の中では結構衝撃でした。ロゴって、デザインって、ただかっこ良ければ良いって思ってたのだけれど、そういうもんじゃないのか、と。デザインって、ただの見た目の話じゃないんだと知ったのは、まさしくこの時のやり取りがきっかけだったように思います。

どんな世界を実現したいのか

ロゴ事件のあと、さらなるデザインとの接点がありました。確か2008年の夏頃だったかと思います。私は大学院でユーザビリティ評価に関する研究に取り組んでいまして、その中では、ユーザ中心デザインという単語が出てきたりするんですね。当時、ユーザ中心デザインというと、ドナルド・ノーマンだとか、ヤコブ・ニールセンという方々が有名でして、彼らの本を幾つか読み漁っていました。例えば、誰のためのデザインなどが有名でしょうか。

誰のためのデザイン? 増補・改訂版 ―認知科学者のデザイン原論

誰のためのデザイン? 増補・改訂版 ―認知科学者のデザイン原論

 

しかしながら、これらの本の大部分はユーザビリティに関する話なわけです。アフォーダンスがどうだとか、人と製品とのインタフェースに関する話だとか、こういうユーザインタフェースは良くないとかが中心になってくるのです。見た目の話のみではないけれど、あくまでもユーザから見た使いやすさだとかにフォーカスを当てているんですね。

当然これらの話は、製品を作る上で重要な話ですので私自身も興味を持って熱心に論文を読んだり本を読んで居たわけで、その時Amazonで見かけたのが下記の本なわけです。

ペルソナ作って、それからどうするの? ユーザー中心デザインで作るWebサイト

ペルソナ作って、それからどうするの? ユーザー中心デザインで作るWebサイト

 

本書の執筆当時は株式会社イードに、現在は株式会社ロフトワークでイノベーションメーカーとしてご活躍されている棚橋さんが書かれた本です。

購入する前は、ペルソナだとか、ユーザ中心設計、つまりユーザビリティに関わるようなインタフェースをどうやって検討する本かと思って購入したんですが、全然違いました。違うんだけれど、大変良い意味で裏切られました。

第一章がまず、デザインとは何か?というテーマで始まっているのです。第一章は下記のように始まります。

「どんな世界を実現したいのか」デザインを考える上で、まず自らが発すべきは、間違いなくこの問いだと思います。

そして本書では、何のライフスタイルの提案も無い表面的なモデルチェンジや、テクノロジー主導のイノベーションによる売るためのモノ作りを批判した上で、デザインとはスタイリングではないとはっきり言い切っています。

デザインとはスタイリングだと私に取っては、大変な衝撃でした。しかし衝撃を受けたものの、ユーザビリティ評価の研究に没頭していた私は、一通り内容を読んだだけで、それ以上のアクションを起こさなかったんですよね。

アートとデザインって何が違うの?

社会人になってから、たしか2010年の夏頃だったかと思います。未踏の友人達と起業しようって話になった時でした。その時のメンバーに当時筑波大学の学生だった人が居ました。その人は、受託等でデザインを受け取ったりしている人で、デザインに関して色々と教えてくれました。

今でも印象に残っているのは、デザインとアートの違いについてだったかと思います。起業に関する打ち合わせはいつも渋谷にあるシェアオフィス的なところでやっていました。その人は大学の課題が結構溜まっている様子で、オフィスで課題に取り組んで居たのを思い出します。

ポスターのデザインをしなさいという課題をポスターのサンプル集的なものを見ながらデザインしてたので、私聞いたんです。デザインの課題なのに、真似していいの?と。

そしたら彼はこういうわけです。アートはユニークじゃないといけないけれど、デザインには目的があり、目的を達成出来るのが良いデザインなんだ。目的を達成出来るのであれば他と同じであっても問題無い、と。

私はそれを聞いて、そういえばデザインはただのスタイリングではないってのを本でも読んだなとか、以前ロゴのデザインを頼んだ時にもそういった話が出てきたなぁとか、色々思い出すわけですよね。

なんだかんだで以前からデザインという分野に興味は持って居たものの、本格的に興味を持ち始めたのはこの件以降じゃないかなと思うのです。自分はこれまで色々なモノを作ってきたけれど、自分にはデザインの視点が必要なのではないか、と。

おわりに

デザインスクール留学のきっかけというと点では、他にも色々要素があるのですが、デザインに興味を持ったきっかけという点では、上記3つの経験が大きいのではないかと思います。

どの経験も結局は、デザインってのはただのスタイリングじゃねーぞ、ってのを言っているだけなんですが、異なるシーンで異なる人から同様の事を教えられたからこそ、ここまでデザインというものに対して興味を持ったのかな、と思います。