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デザインダイアローグコペンハーゲン

デンマークのコペンハーゲンでのデザイン留学の日々について書いています

デザインにおけるHow Might Weとは何か:具体例とその効果

デザイン


このブログでは何度かHow Might We(How Might We Question、HMWと書く場合もあります)という単語を使っているにも関わらず、How Might Weについてきちんと説明していない事に気がついたので、そろそろきちんと書いてみたいと思います。

How Might Weと言うのは、日本語にすれば「我々はどうすれば◯◯できるか」というカタチで、解くべき問題を定義する方法です。約10年前にIDEOが使い始めたのち、今では世界中の多くのデザインファームやデザイン教育機関で使われているらしく、もちろん、私の居るCIIDでも例外ではありません。

それにも関わらず、日本語情報が非常に少ない。唯一見つけたのは下記の記事ぐらいなのだけれど、これはHow might weの説明というよりも、使う言葉を変えるだけで色々良いことがあるよ、以上の事は書いてありません。

www.dhbr.net

そこで海外のサイトを引用しながらHow Might Weについて説明しようと思います。下記はスタンフォード大学のd.schoolで公開されている資料です。これを参考にHow Might Weの例と、何故How Might Weを作るかを説明したいと思います。

http://dschool.stanford.edu/wp-content/uploads/2012/05/HMW-METHODCARD.pdf

まずは、具体的なHow Might Weの例から。

How Might Weの例

今回のデザイン課題は下記のようなものだったとします。

地元の国際空港の地上での体験をデザインする。

こういう依頼を受けるとデザイナ達は空港に出かけて利用者の様子を観察したり、利用者にインタビューを行う等して、空港が持つ課題を洗い出していくはずです。その結果。下記のような課題を見つけ、これに対して解決を試みる事となりました。ちなみに、下記のような問題定義をPoint of View(着眼点)と言ったりもします。

子供を連れた母親は空港のゲートで待っているあいだ、彼女の子どもたちを退屈させないように楽しませる必要があります。なぜならば子供達は大声を出したり、走り回ったりなどして、他の乗客をイライラさせる場合があるためです。

 そして、この問題定義から、どのようなHow Might Weを作成出来るかですが、多くのパターンが有ります。

良い面を伸ばす

我々はどうすれば、子どもたちのエネルギーを他の乗客を楽しませる事に使えるだろうか。

子どもたちがエネルギーを持っている事をポジティブにとらえ、これをなんとか活用出来ないかを探って行こうという方向性ですね。 

悪い面を除去する

我々はどうすれば、子どもたちを他の乗客から分離出来るだろうか。

上記の逆パターンですが、子どもたちのエネルギーが他の乗客に取って迷惑になるのであれば子どもたちを乗客から分離できればよいのではないか?と言う発想です。

反対を探す

我々はどうすれば、待ち時間を旅の楽しみに変える事が出来るだろうか。

待ち時間と言うのは旅の中で面白くない部分のひとつですが、どうすればこれを楽しく出来るか?と言うところをスタートとしています。

そもそもの質問

我々はどうすれば、空港での待ち時間をなくすことが出来るだろうか。

そもそも待ち時間が無ければ問題は発生しないため、どうすればそれをなくす事が出来るかという、根本に切り込んだ質問ですね。 

形容詞で考える

我々はどうすれば待ち時間を苦しい時間から心地よい時間に変える事ができるだろうか。

現状、どのような形容詞が存在するかを考えて、それをいかに変化させるかと言う質問ですね。

他のリソースを活用

我々はどうすれば他の乗客の自由時間を活用することが出来るだろうか。

 他に使用可能なリソースがあるかどうかに着目しています。

ニーズやコンテクストから連想する

我々はどうすれば空港をスパや遊び場のように出来るだろうか。

 子どもたちの様子から連想して問題を設定します。

課題に対してPOVを適用させる

我々はどうすれば空港を子どもたちが楽しめる場所に変える事ができるか。 

子供達が楽しめれば結果として母親の問題を解決できるという話ですね。

現状を変更する

我々はどうすれば子供達をおとなしくさせることが出来るだろうか。

 子どもたちが騒がしいのが問題なので、それをどうすればおとなしく出来るのかという問いかけです。

問題を分割する

我々はどうすれば子供達を楽しませる事ができますか。我々はどうすれば母親を焦らさずにすみますか。我々はどうすれば他の乗客を安心させる事が出来ますか。 

 最後はちょっと毛色が違いますが、問題をそれぞれ分けて考えると言う事もアリですね。このようにひとつの問題に対しても様々な角度からHow Might Weを作成する事が出来ます。

何故How Might Weを作成するのか

次に、How Might Weを作る理由、How Might Weを作るとどんないいことがあるのかについて。

How Might Weはブレインストーミングを始めるための短い質問で、この質問は、問題意識(着眼点)だとか、アイディア創出の種として機能します。良いアイディアを創出するためには、ある程度の制限を加える事が有効だと言われていますが、How Might Weによってこの制限を加えて居るわけですね。

たとえば、下記のような課題だと、何でもありすぎて何のアイディアを出して良いのかわかりませんし、そもそもそれが何らかの課題を解決しているのか、ユーザに取って有益なのかすらわかりません。

地元の国際空港の地上での体験をデザインする。

そこで、下記のように問題を明確にするわけですが、これでもやはり様々な解決の方向性があるのは上であげた通りです。

子供を連れた母親は空港のゲートで待っているあいだ、彼女の子どもたちを退屈させないように楽しませる必要があります。なぜならば子供達は他の乗客をイライラさせる場合があるためです。

上記の問題定義からいきなりアイディア出しをやってしまうと、アイディアはいろいろと出るでしょうが様々な方向があって、ブラッシュアプ的な効果が働かず、それぞれのアイディアが薄くなってしまう可能性があります。

そのため、How Might Weを作成する事によって、解決の方向性を制限し、その分野に集中して様々なアイディアを出して行くわけです。

ただし、How Might Weは広すぎても狭すぎてもうまく機能しません。狭すぎるHow Might Weの例としては下記のような物があります。

どうすれば我々はアイスクリームを地面にボタボタ落とさずに食べるためのコーンを作ることが出来るか

 こういったHow Might Weを作成してしまうと、アイディア出しをしたところでコーンの形状しか工夫する余地がなく、あまり良いアイディアが出てこない可能性があります。

逆に広すぎる例としては下記のような物があります。

どうすれば我々は、デザートを再定義出来るか

これは広すぎて、どんなアイディアを出して良いのかわかりませんし様々な方向性からポツポツとアイディアが出てしまい、それらの中に良いアイディアが出るかと言うと可能性は低いのでは無いかと思われます。

では適切なHow Might Weは何かと言うと下記のようなものでしょうか。

どうすれば我々は、アイスクリームをより持ち運びやすくできるか

 これであれば、アイディアとしてコーンの形状と言うのもあるかもしれませんし、コーン外側に何らかのデバイスを装着すると言う可能性もあるかも知れませんし、持ち運び用のケースのアイディアが出てくるかも知れません。

How Might Weの作り方

なお、How Might Weで始まる文章を作る方法ですが、やはりブレインストーミングを行う事が多いようです。つまり、具体的なアイディアを考える前に、解決の方向性について考えるわけですね。

一見遠回りのようにも見えてしまいますが、解決の方向性についてチームで意思統一しておく事で、より密度の濃いアイディア出しが可能になります。密度が濃いと言う事は、「そういうのがあるならこういうのもありだよね」などとチームメンバーのアイディアをブラッシュアップしたりする機会も増えると言う事であり、最終的により良いアイディアが出揃うのかな、とこれまでの経験から感じています。