デザインダイアローグコペンハーゲン

デンマークのコペンハーゲンでのデザイン留学を通して考えたこと

妄想ではなく、事実をもとにコンセプトを作り上げる

先週からGUI(Graphical user interface)の授業を受けて居ます。GUIの授業と言っても、ボタンがどうだとか、アイコンがどうだなどと言う話ではなく、画面を持つサービス、アプリをどのようにとらえて、どのように設計して、どのようにテストし、どのようにブラッシュアップしていくかと言う話が中心で、これら一連の流れをプロジェクトベースで学んで行くわけです。そして今回の授業はCIIDでは珍しく3週間のプロジェクトとなっています。3週間の間に作ってテストして、作ってテストしてを繰り返すわけですね。

今回のプロジェクトの第1週目はコンセプトづくりからはじまりました。コンセプトを作ると言っても、いきなりアイディア出しから始めるわけではありません。今回我々が教授陣から言われたのは下記のような事。

人と話して彼らの行動、その動機、ニーズなどの事実を集めろ

つまり、我々の頭で考えたって思い込みの上に成り立ったアイディアしか出てこないだろうから、ちゃんと世の中を見て、その上で必要な物を考えなさいと言う事でしょうか。

とはいえ、いきなり何の準備も無しに人と話をしても雑談に終わってしまうのが落ちでしょうし、行動や動機、ニーズを知れと言われても、取り留めのない話でもあります。そこで、以前下記の記事で書いたように、チームでResearch Objectiveの設定を行います。つまり、我々がどういったことに興味があるかというすり合わせを行うわけですね。

ddcph.hatenablog.com

Research Objectiveの設定を行うと、こういうことを聞かないと行けないねとか、こういうことも聞いたほうが良いんじゃない等と方向性がまとまってきますので、あとはそれらをもとにリサーチを行う事になります。私自身も何人かの友人に協力してもらって、Skypeで30分から1時間ほど話をさせて頂いて色々と興味深い話を聞かせて頂く事が出来ました。

その後は、話をさせてもらった内容をもとに、情報の共有を行います。共有する内容としては例えば下記のような点があります。

  • その人の属性(学生なのか社会人なのか、性別、年齢、国籍、どこに住んでいるかなど)
  • その人がどういったことに困っているか、ニーズを抱えていそうか
  • 話をしていて興味深かった点など
  • その人に対して我々がデザインで貢献出来そうな余地はあるか

これらの内容を共有して壁に張り出すしたあとはHow Might We Questionの作成を行います。この辺りの話は下記の記事と共通する点も多いので、合わせて読んで頂くのが良いかと思います。

ddcph.hatenablog.com

今回、具体的なコンセプト作成する前にインタビューを行いそれを共有したと言う点では、以前実施したスポーツ施設向けのリサーチプロジェクトと同じなのですが、ここで大事なのは実際のユーザを常に意識しなければならないと言う点なのかなと思っています。

スポーツ施設のリサーチでは、施設のユーザが明らかに我々ではないので実際のユーザ、ステークホルダーに話を聞きに行こうとなるのが自然な流れなのですが、今回のプロジェクトは、アプリやサービスなわけです。となるとどうなるか。我々は日常的にスマートフォンやパソコンを使用していますから、我々だって立派な想定ユーザーになり得るわけですが、そうなると正直なところ、議論がややこしくなるなぁと感じました。

と言うのはリサーチをせずにアイディア出しをすると「こういうアプリはどう?」とアイディアに対して、「自分が好きかどうか」とか「そんな奴おらへんやろ」とか、自分の経験や知識をベースにアイディアを評価してしまいがちだと思うのです。それはつまり、ふわふわした議論になりがちで結局のところ高い納得感を得られにくくなります。

ところが、リサーチをしたうえで、こんなユーザが居ましたと言う事実を共有したうえでアイディア出しを行うと、アイディア評価の基準が彼らになるように感じました。このアイディアは、この人に刺さりそうだねとか、この人とこの人は、こういうニーズを持ってるねとか。集めた事実をベースに議論する事で、自分の考えと違うアイディアであっても、まぁそういうもんだろうと納得することが出来ますし、プロジェクトを進めるに当たってチームのモチベーションを維持する事が出来るのは無いかと思います。

また、それにあたっては、下記の記事でも書いた事ですが、チームでリサーチをするということもあるのかなと思います。こういう人とこういう人が居ました、と結果だけ共有したところで、それはちょっと違う気がするんですよね。インタビューは個別、もしくはチーム全員でしなかったとしても、少なくともリサーチの計画や目的策定だとかは最低限チームで取り組むことが、チームダイナミクスを生み出すために必要なのではないかなと思うのです。

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