デザインダイアローグコペンハーゲン

デンマークのコペンハーゲンでのデザイン留学を通して考えたこと

仮説検証プロセスとしてのプロトタイピング

CIIDにはLerning By Doingと言う考え方があり、授業の内容もこれに沿ったものとなっています。もちろん座学で理論についての説明を受ける事もあるのですが、時間配分で言うと圧倒的に少なく、体感的には10%が座学、残り90%が実習と言った感じでしょうか。

実習としてはやはり、なにか新しい物を作るための手法に焦点を当てた物が多いです。対象は新しいプロダクト(時計や靴下)を考えたり、新しいインタフェース(例えばスマホアプリ用のジェスチャなど)を考えたり、新しいサービス(カフェや美術館など)、新しい広告のデザインを考えたりなど、様々な物があります。

これらの実習では、毎回同じアプローチで取り組むのではなく、毎回新しいツールや方法などを取り入れて行きます。例えば、冒頭にあげた写真は、コペンハーゲンが誇る(世界三大ガッカリスポットでもあるそうですが)観光スポットである人魚姫像を訪れる観光客の様子を観察して新たな知見を得ようと言う実習。観察すると言っても色々な方法があり、それぞれが幾つかの手法を順番に試してみて気づきを共有するなど大変興味深い内容でした。

他の実習では、例えばブレインストーミングなのですが、Mover、Opposer、Bystander、Followerと言う役割に分かれて議論を行う事でどういう変化があるかだとか、TimeBoxingと呼ばれる手法を使ってみたりなど、とにかくLearning by Doingのコンセプトが至る所に散りばめられています。

そうしてこれら様々な手法を通して作成したコンセプトについて、クラスのみんなの前で発表する事になるのですが、必ず聞かれるのが「What is your hypothesis?」と言うこと。つまり、あなたがこの課題に対して立てた仮説はなんですか?貴方の提案が検証しようとしていることはなんですか?と言うこと。そして「こうすれば多分うまくいく」と言うのは仮説ではない、ということも言われます。

ここで言う仮説とは例えば「ユーザーはこう言う課題を持っており、こういう製品があればそれを解決出来るはずだ」と言うもの。通常、私達がプロトタイプとか言う言葉を使う時、それは「これを使えば解決出来るはず」という何らかのモノである事が多いように重います。そうなるとプロトタイピングと言う言葉は必然的に、モノを作る行為と捉えられてしまいがちな様に思います。

だけれど、プロトタイピングとはモノを作る行為で、ものを作ることが目的ではなく、仮説を検証する行為であり、仮説の信頼性を高めるための行為であると言うこと。そしてそれは繰り返し行う事によって仮説の信頼性をより高めるための行為であると言うことがtest a lot, fail a lot, learn a lotと言うような言葉で強調されていました。

なお、プロトタイプ、プロトタイピングに関しては1年以上前になりますが下記のような記事を書いて居ました。下記記事ではプロトタイピングの目的を3種類に分けて書いているのだけれど、こちらにきて、プロトタイピングは仮説検証プロセスなんだとという説明を聞き、私の中で妙になんだかこれまでの経験と繋がったような気がしたのでした。

mikio-k.hatenablog.com